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公証事務

7-4
定款認証

定款認証の意義等

Q. 定款とは何ですか。何故、公証人の認証が必要なのですか。

1 定款とは何か。

定款は、会社、公益法人、社団法人、財団法人、各種協同組合等の法人の目的、組織、活動に関する根本となる基本的な規則です。これを書面若しくは電磁的記録に記載又は記録したものをいうこともあります。

【定款の作成方法、契印、作成日時】

定款の作成方法は、通常次のようにされています。

  1. 書面による場合は、A4版の用紙に片面に横書きで記載し、表紙、本文、裏表紙の順に綴り、袋とじにするか、ステープラ(ホチキス)等で綴じます。表紙には、通常会社の商号等を記載します。字の大きさ等は、12ポイント、標準書体で印刷すると見やすくなります。
  2. 定款原本には、発起人が署名又は記名押印し、各葉ごとに契印します(この契印に代えて、袋とじの場合には、つなぎ目に契印することでかまいません。)
【定款の作成、署名】

法人を設立する場合、会社であれば発起人、社団法人であれば社員、財団法人であれば設立者(以下、単に「発起人」として、説明します。)が定款を作成し、これに署名又は記名押印をすることになります。電子定款によるときは、定款をPDFファイルで作成し、電子署名をすることになります。
作成日付は、記載するのが普通です。なお、その作成日付は、認証する日よりも以前の日になります。

  1. 定款に使用する言語は、日本語になります。英語、ドイツ語等が併記されている定款であっても、日本語の部分が正式の定款となり、外国語の部分は翻訳として扱われます。
  2. 定款記載例

2 定款の認証とは何か。

定款の認証とは、公証人が、正当な手続きにより定款が作成されたことを証明することを言います。

次のような法人の設立をするときには、公証人の認証を受ける必要があります(ただし、公証人の認証を受ける必要があるのは、設立当初の定款だけで、その後定款を変更するときは必要ありません。)。設立当初の定款(原始定款とも言います。)について、公証人の認証が必要とされるのは、

  1. 発起人が原始定款を作成したこと
  2. その内容の明確性を確保し、後日紛争になったときにその内容を確実に証明し、不正行為を防止することにあるためです。

3 公証人の認証を必要とする定款

  1. 株式会社
  2. 一般社団法人及び一般財団法人
  3. 税理士法人・司法書士法人・行政書士法人・土地家屋調査士法人・社会保険労務士法人・弁護士法人・監査法人・特許業務法人・特定目的会社・相互会社・金融商品会員制法人
  4. 信用金庫、信用中央金庫及び信用金庫連合会

4 公証人の認証を必要としない定款

いわゆる持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)の定款については、公証人の認証を必要としません。

5 定款の認証後の変更について

  1. 定款の認証を受けた後、創立総会において本店所在地を他の法務局又は地方法務局管内に変更したときは、変更後の定款について改めてその本店所在地管内の公証人に認証を受けなければなりません。
  2. 裁判所が変態設立事項について検査役の報告を受けた結果、不当と認めて決定をしたような場合には、公証人の認証を改めて受けることなく変更できます(会社法30条2項)。このほかの事項について、改めて、公証人の認証を得る必要があるかどうかは、認証を受けた公証人に問い合わせをしてください。
  3. なお、会社の目的を一部修正する場合や発起人の氏名の誤記を訂正する場合など、定款の変更する内容が軽微な場合には、先に認証した定款を事実上訂正し、初めからそのような定款であるとして扱うこともあります。定款の事実上の訂正で済ませることができるかどうかは、認証を受けた公証人に問い合わせをしてください。もっとも、発起人又は社員の交替は、定款変更手続によるか、新しく定款を作成する必要があります。

Q. 定款の認証は、どこの公証人でするのですか。

定款の認証は、会社の本店の所在地を管轄する法務局又は地方法務局に所属する公証人しかできません(公証人法62条ノ2)。例えば、東京都内に本店を置く会社等の定款は、東京法務局所属の公証人(東京都内の公証役場の公証人になります。)が認証し、それ以外の他の地域に所属する公証人は認証できません。公証人の職務ができる区域は、その公証人の所属する法務局又は地方法務局の管轄区域による(公証人法17条)とされています。管轄区域外の公証人がした定款の認証については、無効となるので、くれぐれも本店の所在地の公証役場で認証を受けるようにしてください。

Q. 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。

  1. 定款の認証の手数料は、1件5万円です(公証人手数料令35条)。
    これに加えて、通常、登記申請用の謄本を請求しますが、その手数料は、謄本1枚につき250円です。認証文も同じように計算します(手数料令40条)。
    定款の表紙(表・裏)については、原則として枚数に入れませんが、訂正印により本文の訂正がされているときは、本文の記載と同じものと扱って枚数に入れます。
  2. 株式会社や相互会社の定款の認証については、電子定款によらない場合には、収入印紙4万円を公証人保存原本に貼付します。
    なお、会社であっても電子定款による場合や特定目的会社の定款については、収入印紙は貼付する必要はありません。また、社団法人の定款や信用金庫の定款についても収入印紙は、貼付しません。
  3. 変更定款の場合、手数料は手数料令では定められておりませんが、1件について法律行為の補充又は更正に準じて2万5000円とされるようです。この点は、認証を予定している公証役場にお問い合わせください。この場合、収入印紙は貼付しません。
  4. 株式会社を設立するのに、最低限必要な費用は次のとおりです。
    ア 認証手数料5万円
    イ 謄本手数料1枚250円大体8枚2000円くらい
    ウ 印紙代4万円。ただし電子定款のときはなし
    エ 設立登記に必要な登録免許税15万円か出資額の1000分の7のいずれか高い額。
    オ このほか、募集設立の際には、払込保管証明書約2万5000円
    カ これに加えて、代表者印の作成費用、印鑑登録証明書代がかかります。

書面による定款の認証嘱託の手続等

Q. 定款認証にどのような書類が必要ですか。

  1. 定款認証の嘱託には、定款(原本)2通を公証人に提出します(公証人法62条ノ3第1項)。公証人が認証をした上、このうち1通は役場保存用原本として保存し、もう1通を会社保存用原本として嘱託人に還付します。
    実務では、設立登記の申請の際には、認証を得た謄本1通が必要となるので、この分も入れて、通常は定款3通を提出することになります。
  2. 定款の作成方法、契印等については、前記【定款の作成方法、契印、作成日時】を参照してください。
    定款中に訂正(挿入、削除)があるときは、その字数及び箇所を記載して作成し、作成者全員が訂正印を押捺する必要があります。訂正のための捨印があると、対応が容易になります。具体的な訂正の方法等は公証役場にご相談ください。
  3. 発起人の印鑑登録証明書
    発起人が人違いでないことの証明をすることが必要です。
    定款に記載された発起人の住所、氏名及び押印の正確性を確認できることや多くの場合、発起人が設立時の取締役等を兼ねることもあって、実務上は印鑑登録証明書の提出によっています。なお、印鑑登録証明書は発行後3か月以内のものに限られています。
    外国人が発起人になる場合は、次のQ&Aを参照してください。
  4. 会社が発起人の場合には、代表者の印鑑登録証明書のほかに会社の登記簿謄本が必要です。会社が発起人となる場合には、新しく設立する会社の発起人となることが発起人となる会社の目的の範囲内でなければなりません。具体的には、新会社の目的と同種の事業が掲げられていること(新会社の目的の一つと重なっていること)を確認することになります。

Q. 外国人や外国会社は、発起人になることができますか。

1 外国人についても、発起人となることができます。なお、外国人の場合であっても、日本において法律行為をする場合には、能力者かどうかは日本法で判断することになります。

(法の適用に関する通則法4条2項)

2 外国人の場合の本人確認資料について

  1. 面前署名、面前自認の場合
    ア 外国人登録原票に登録されていれば、印鑑登録ができますので、印鑑登録証明書によります。
    イ このほか、在留カード、運転免許証、パスポート、当該国の駐日領事による署名証明書によることもできます。

  2. 代理自認や作成代理の場合
    代理人の本人確認資料としては、上記①と同じです。
    このほか、代理権限を証明するものとして、委任状とその成立を証明するものが必要です。
    具体的には、当該外国人が上記①アのように日本において印鑑登録しているときは、委任状に登録印(実印)を押捺し、印鑑登録証明書を添えて提出します。
    当該外国人の国が印鑑登録制度を採用しているときはこれと同様の扱いになります。
    当該外国人の国が印鑑登録制度を採用していないときは、委任状は署名(サイン)によることになり、委任状に当該国の公証人若しくは当該国の領事の認証を受けるか、当該国の領事等公的機関の署名(サイン)証明により委任状の真正を確認する必要があります。
    なお、署名(サイン)による場合には、割印又は捨印の欄には、末尾と同じ署名(サイン)をします。

3 外国会社が発起人となる場合

  1. 外国会社も発起人となることができます。
  2. 資格証明等について
    ア 外国法人が我が国に商業登記を有する場合には日本法人と同じです。
    イ 商業登記を有しない場合
    次のいずれかの法人の資格証明書の原本又は認証謄本を提出します。
    あ)本店所在国の権限ある官公署発行の証明書
    い)本店所在国の権限ある公証人発行の証明書
  3. 会社代表者の印鑑証明書に当たるものについては、本店所在国に類似の制度があればその証明書を提出し、それがないときには、当該代表者個人の署名(サイン)証明書を提出するなどします。具体的にどのような方法によるかは、定款認証を予定する公証役場にお問い合わせください。
  4. 代理自認の場合には、上記 2 外国人の場合の本人確認資料についての②の代理自認とほぼ同じようになりますが、具体的にどのような方法によるかは、定款認証を予定する公証役場にお問い合わせください。

Q. 代理人による定款認証の嘱託手続きを教えてください。

定款認証の手続は、代理人によってすることもできます。発起人の一人が他の発起人の代理人となる場合や発起人全員が他の第三者に代理を嘱託することもできます。

代理人となる人については、本人による場合と同様に本人であることを証明(印鑑登録証明書、運転免許証、パスポート等)する必要があり、かつ発起人から嘱託を受けていることを証明する委任状を提出することが必要です。実際には、委任する発起人全員の印鑑登録証明書を提出することになります。

委任状の書式等については、認証を予定している公証役場にお問い合わせください。

Q. 定款の閲覧請求、謄本請求はどのようにするのですか。

嘱託人、その承継人又は利害関係人は、定款認証をした公証役場(多くは本店所在地の公証役場になると思われます。)で保存する定款及びその付属書類の謄本の請求をし、又はその閲覧を請求することができます。(公証人法62条ノ5、60条ノ4、51条ないし56条)。なお、手数料は、謄本については1枚につき250円、閲覧は1回200円になります。

株式会社の法規制

Q. 株式会社を設立するにはどのような方法がありますか。

  1. 株式会社の設立は、会社法25条1項により二つの方法が定められており、その一つの発起設立は、会社の設立に際して発行する株式総数を発起人が引受け、発起人以外の者から株式を募集しないで会社を設立する方法であり(会26条から56条)、他の一つの募集設立は、設立に際して発行する株式総数の一部を発起人が引受け、残りの株式は他から株主を募集して会社を設立する方法です(会26条から37条、39条、47条から103条)。なお、いずれの方法でも、発起人は1株以上設立時発行株式を引き受けることが必要です(会25条2項)。
    一般的には、発起設立は、発起人だけで出資をまかなう比較的小規模な会社の設立に適しており、募集設立は、発起人だけで出資ができない場合など、比較的大規模な会社の設立に適していると言えます。
  2. 発起設立と募集設立では、設立手続がかなり異なり、募集設立では、株主の募集や創立総会の手続を経なければならないなど、手続的に複雑です。
    募集設立では、創立総会において、設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役及び設立時会計監査人等を選任することになります(会88条)。
    また、会社法でも、発起・募集設立ともに、設立の際の払い込みは払込取扱機関による必要がありますが、その払い込まれた金銭の額の証明のためには、募集設立では、払込取扱機関による払込金保管証明が必要ですが、発起設立では、払込金を払い込んだことを証明するに足る預金通帳の写し等の任意の方法によることができます(商業登記法47条2項5号。なお、会64条1項)。

定款の記載事項とその配列

Q. 株式会社の定款の記載事項について、どのようなものがありますか。

1 定款の記載事項には、

  1. 法律上必ず記載しないと定款が無効となるもの(絶対的記載事項、会社法27条)
  2. 定款に記載しないと効力が生じないもの(相対的記載事項)
  3. 記載するかしないか当事者に任されているもの(任意的記載事項)があります。

このうち、上記1は必ず、記載していないと定款が無効となるので、注意を要します。
会社法が規定する定款の絶対的記載事項は、次のとおりです(会27条)。

  1. 目的
  2. 商号
  3. 本店の所在地
  4. 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
    設立に際して発行する株式の総数(設立時発行株式総数)については、出資される財産の総額にかかわらず、設立時発行株式数が定まる改正前商法の規定は、設立手続を硬直化させるおそれがあるとして、絶対的記載事項から除き、会社の設立に際して出資される財産の価額又はその最低額を定めて定款に記載すべきであるとされました(会27条4号)。
  5. 発起人の氏名又は名称及び住所

以上の事項の記載を欠く定款は無効です。
なお、会社が発行する株式の総数(発行可能株式総数)については、定款作成時に定める必要はないものとし、設立中の株式引受け状況を見極めながら、設立登記申請時までに定款に定めればよいことになっています(会37条、98条)。

2 相対的記載事項とは、絶対的記載事項と異なり、定款に記載がなくても直ちに定款の無効を招来しないが、記載がない以上その事項につき効力が認められない事項です。会社法は、法律の各条項に一応の定めがある事項について定款によりこれと異なる定めを置くことができる場合を、逐一その条項に明記しており、法律に「定款により別段の定めをすることができる」旨の規定がない以上、それと異なる定款の定めは認められません。そこで、会社法に「定款により別段の定めをすることができる」旨の定めがある事項が相対的記載事項ということになります。

このような意味で法が承認し、定款自治に委ねた相対的記載事項は、相当広範囲、かつ、重要なものであり、そのうち主要なものを示せば、次のようなものがあります。

  1. 変態設立事項(会28)
  2. 設立時取締役及び取締役選任についての累積投票廃除(会89条、342条)
  3. 株主名簿管理人(会123条)
  4. 譲渡制限株式の指定買取人の指定を株主総会(取締役会設置会社にあっては取締役会)以外の者の権限とする定め(会140条5項)
  5. 相続人等に対する売渡請求(会174条)
  6. 単元株式数(会188条1項)
  7. 株券発行(会214条)
  8. 株主総会、取締役会及び監査役会招集通知期間短縮(会299条1項、368条1項、376条2項、392条1項)
  9. 取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人及び委員会の設置(会326条2項)
  10. 取締役、会計参与、監査役、執行役及び会計監査人の責任免除(会426条)
  11. 社外取締役、会計参与、社外監査役及び会計監査人の責任限定契約(会427条)
  12. 取締役会設置会社における中間配当の定め(会454条5項)

3 任意的記載事項

定款の記載事項のうち、絶対的記載事項及び相対的記載事項以外の事項で、会社法その他の強行法規の規定等に違反しないものを任意的記載事項といいます(会社法29条に規定する「この法律の規定に違反しないもの」に該当します。)。任意的記載事項は、定款に定めた範囲で株主その他の内部の者を拘束し、その事項を変更するには、定款変更の手続が必要です。

任意的記載事項としては、例えば次の事項に関する規定があります。

(1)株式について
  1. 株主名簿の基準日(会124条)
  2. 株主名簿の名義書換手続(会133条、134条)
  3. 株券の再発行手続(会228条2項)
(2)株主総会について
  1. 定時株主総会の招集時期(会296条1項)
  2. 株主総会の議長(会315条)
  3. 議決権の代理行使(会310条)
(3)株主総会以外の機関について
  1. 取締役(会326条1項、331条4項)、監査役、執行役(会402条1項)の員数
  2. 代表取締役(会349条3項)、役付取締役(会長、社長、副社長、専務取締役、常務取締役等)
  3. 取締役会の招集権者(会366条1項)
(4)計算について

事業年度(会296条1項、会社計算規則91条2項)

(5)公告について

公告の方法(会939条1項)
会社法は、すべての会社の公告方法について、任意的記載事項とし、官報に掲載する方法、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法、電子公告のいずれかを選択できるものとし(会939条1項)、定款に公告方法の定めがない会社については、自動的に官報に掲載する方法によることとしています(同条4項)。

Q. 株式会社の定款の配列は、通常どのようになっていますか。

総則・株式・株主総会・執行機関・監査機関・計算・附則の順に章を立てるのが普通であり、会社の規模等により機関すなわち「取締役・取締役会・監査役」に関する事項を各独立の章としたり一括の章としたりするなどの工夫がなされており、「執行機関」「監査機関」に関しては会社法の認める機関設計の選択幅に応じ、適切な章題を付すこととなります。

  1. 「総則」の章には、商号、目的、本店所在地を記載します。公告の方法を定めるなら、従来の慣例でもあり、総則に記載するのが適当です。絶対的記載事項である「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」については、総則に記載する考え方と、一過性であること、従来、「設立に際し発行する株式数」が附則に記載する慣例であったことなどから、附則に記載する考え方があり得ますが、附則に記載するのが適当と思われます。
  2. 「株式」の章には、定款認証の際に不可欠な記載事項はありませんが、発行可能株式総数、株券発行の有無・種類、株式の譲渡制限、基準日等、記載しておくのが相当な重要事項があります。
  3. 「株主総会」の章も全て相対的記載事項又は任意的記載事項ですが、招集手続、議決要件等、記載しておくのが相当な重要事項があります。
  4. 「執行機関」に関する章は、「取締役及び代表取締役」など全ての株式会社の定款において当然置かれるべきもののほか、選択した機関設計により「取締役会」「委員会」「執行役」などの章が置かれます。
  5. 「監査機関」に関する章は、機関設計における選択の結果によっては不要になる場合がありますが、設置する場合には、「監査役」「監査役会」「会計監査人」「会計参与」等、法規に則し、会社の実情に合わせた組合せにし、その旨記載します。
  6. 「計算」には、事業年度等を記載します。
  7. 「附則」には、会社設立時の一過性の事項を記載するのが一般です。絶対的記載事項である「発起人の氏名又は名称・住所」を記載するほか、相対的記載事項である「現物出資」、「財産引受」、任意的記載事項である「最初の事業年度」等を記載することになります。前記のように「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」を総則でなく、附則に記載するのが適当と思われます。

定款の総則の記載事項

Q. 商号の作成に当たり注意すべき点は何ですか。

  1. 商号とは、会社の名称です(会6条1項)。株式会社の商号には「株式会社」という文字を含まなければなりません(同条2項)。商号に含まれるべき文字は、「株式会社」という漢字四文字であるから、仮名やアルファベットで表示することはできません。この「株式会社」という文字は、商号を構成する付加文字であるから「株式会社」という四文字だけの商号も許されません。
  2. 他の法令により使用を禁止されている文字を用いることも許されません。例えば、銀行、信託、証券、保険等の各事業を営むものでない会社が、その各業者であることを示すような文字を商号中に用いることはできません(銀行6条2項、信託業法14条2項等)。
  3. 会社の商号中に支店であることを示す文字を用いることや、商号中に会社の一営業部門であることを示す「不動産部」のような文字を用いることはできません。
  4. ローマ字を使用した商号、「&」(アンパサンド)、「’」(アポストロフィー)、「、」(コンマ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド)及び「・」(中点)の6種の符号を使用した商号も登記可能です(商業登記規則50条)。ただし、この6種の符号は字句を区切る際の符号として使用する場合に限り用いることができます。したがって、ピリオドは省略を表すものとして商号末尾に使用可能ですが、それ以外の符号は商号の先頭又は末尾に使用できません。
  5. 同一市町村内において同一の営業のために他人が登記した商号や他人が登記した商号と判然区別することができない商号も登記することはできますが、会社法第8条による侵害停止又は予防請求、不正競争防止法に基づく差し止め及び損害賠償(不正競争防止法3条ないし5条)等の制度があり、たとえ登記は受理されても、発起人等は、そのようなことに注意する必要があります。
    また、不動産登記等において、法人は住所と商号によって特定することとされているため、同一商号・同一住所の会社が複数存在することを認めることは相当でなく、商業登記関係でも同一住所同一商号の登記は許されません(商業登記法27条)。そのため引き続き商号調査簿が管轄登記所において無料で閲覧できます。

Q. 会社の目的について、注意すべき点は何ですか。

会社は、その資本を基に事業を行って利益をあげることを目指して設立されるものであり、この会社の営もうとする事業を会社の目的といいます。会社の目的は、商号等とともに会社を識別する基準であり、株主及び取引の相手方にとって重要なものですから定款の絶対的記載事項とされています。

従来、会社の目的の記載については、適法性、営利性、明確性及び具体性がなければならないとされ、特に明確性及び具体性については、いわゆる類似商号の禁止規定(改正前商法19条)との関係で慎重に判断がなされてきました。禁止される類似商号に当たるか否かの判断に際し、目的が同一か否かが問題になるからです。

ところが、会社法は、類似商号の禁止規定を廃止し、営業所の所在地が同一の場合以外は同一商号であっても登記は受理されることになりました(商業登記法27条)。そこで、目的の具体性は、登記官において審査されないこととなりました。

しかし、会社の目的がどのようなものであるかは、依然として株主や取引の相手方にとって重要な関心事である上、会社法が、類似商号の禁止規定を廃止する一方、不正の目的をもって他の会社と誤認されるような商号を使用することを禁止し、既存の商号使用者からの侵害停止、侵害予防請求を認めていること(会8条1、2項)、不正競争防止法が、他人の商号として広く認識されているものと同一若しくは類似の商号等を使用するなどして他人の営業等と混同を生じさせる行為をした者に対し、差止請求、損害賠償請求を認めていること(不正競争防止法3条ないし5条)から、不正の目的の有無や、誤認混同の有無を判断するに際し、目的の記載が問題となることを考慮すると、目的の記載については、従前どおり適法性、営利性及び明確性が必要とされます。また、保険等については目的に記載する場合に、特別の要件を備える必要がある場合もありますので、認証を予定する公証役場にお問い合わせください。

Q. 公告はどのような方法で行うことになりますか。その注意点は何ですか。

1 公告方法は、任意的記載事項です(会939条)。

会社法939条1項によれば、株式会社は、公告方法として、

  1. 官報に掲載する方法
  2. 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
  3. 電子公告

のいずれかを定款で定めることができ、定款に記載がない場合の公告方法は、官報となります(同条4項)。

2 公告方法を定款に記載する場合の留意点は、次のとおりです。

  1. 公告の方法は、確定されていることを要し、「官報又は日本経済新聞」というような選択的記載は許されません。「官報及び東京都内において発行する日本経済新聞」というように2個以上の公告方法を記載することは差し支えありませんが、定款に数個の公告方法を記載したときは、そのすべてに公告することが必要です。
  2. 日刊新聞紙は、地方紙でも夕刊紙でもよいが、週刊新聞や業界新聞による公告は認められません。新聞紙を特定するために発行地を記載することは必要ではないが、同一新聞で発行地を異にするものがあるときは、そのすべてに掲載することを要するとされていますので、特定地で発行されるものにのみ公告するのであれば、定款に発行地を記載するのが相当であり(例えば「当会社の公告は、東京都内において発行する日本経済新聞に掲載して行う。」というような記載です。)、特定新聞の地方版にのみ公告するのであればその旨を記載すべきです。
  3. 電子公告の方法を採用する場合、定款には、電子公告を公告の方法とする旨定めれば足り、電子公告ホームページのアドレスまで規定する必要はありません(会939条3項前段)。事故(通信手段の長期の混乱等)その他やむを得ない事由によって電子公告による公告をすることができない場合に備え、官報に掲載する方法又は時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法を予備的公告方法として定めておくこともできます(会939条3項後段)。

株式に関する事項

Q. 設立の際の資本金については、どのようになっていますか。

株式会社を設立するには出資が必要ですが(会27条4号、34条1項、63条1項)、設立時の出資額規制は設けられておらず、何人も資本金1円でも株式会社の設立が可能となりました。

Q. 「設立に際して発行する株式の総数」及び「株式会社が発行することができる株式の総数」は、定款に定める必要がありますか。これらは、何時どのように定めるのですか。

1 会社法は、

  1. 定款に設立時発行株式総数を記載する必要はないものとし、設立時には、「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」(設立時出資額)を定めて定款に記載することとし(会27条4号)
  2. 「会社が発行することのできる株式の総数」は、定款作成時に定める必要はなく、会社成立の時(設立登記の時)までに定款を変更して定めればよいとされています(会37条、98条)。この定款変更については、認証は不要です(会30条)。なお、発行可能株式総数は登記事項です(会911条3項6号)。
    以上のとおり、「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」(設立時出資額)は公証人の認証を要する原始定款の絶対的記載事項ですが、発行可能株式総数は原始定款に記載がなくとも、認証することは可能です。発行可能株式総数もその記載がないと会社設立ができないという意味では定款の必要的記載事項ですが、設立手続完了時までに定款を変更して定めればよいもので、その意味では絶対的記載事項ではありません。勿論、原始定款に発行可能株式総数を定めておくことも可能であり、設立の登記申請までに必要なことを考えれば、その方が望ましいといえます。

2 設立時発行株式総数は、定款の絶対的記載事項ではないが、これを定款で定めることは可能です。これを定める場合は、公開会社(発行する株式の一部でも譲渡制限が付されていない会社)については発行可能株式総数の4分の1を下ることができないものとされており(会37条3項)、注意が必要です。なお、定款に定めがある場合を除き、発起人は、

  1. 発起人が割当を受ける設立時発行株式数
  2. 設立時発行株式と引換に払い込む金銭の額
  3. 成立後の会社の資本金・資本準備金の額に関する事項につき、全員の同意で決めること

ができます(会32条1項)。

3 それぞれを定める時期ですが、設立時出資額又はその最低額は、原始定款に記載すべきもので、原始定款作成時に定める必要があります。
発行可能株式総数は、原始定款に記載してもよく、原始定款に記載しない場合は、設立手続完了までに発起人全員の同意により定めて定款を変更することが必要です(会37条1項)。募集設立のときは、創立総会で定めて定款を変更することができます(会98条)。また、原始定款で、発行可能株式総数を定めていても、これらの手続により、その定めを変更することもできます(会96条)。

Q. 株式の内容について、特別の定めをすることができますか。

1 会社法では、発行する全部の株式の内容として、

  1. 譲渡制限株式、
  2. 取得請求権付株式及び
  3. 取得条項付株式とすることを定款で定めることができることとされました(会107条1項、2項)。

これは、発行する株式の全部について、一律に定めるものであり、株式の一部について異なる定めをして発行する場合の種類株式ではないが、上記の①ないし③について、種類株式として発行することもできます(会108条1項)。種類株式には、上記のほかにも、剰余金の配当(優先株式、劣後株式)、残余財産の分配(優先株式、劣後株式)、株主総会において議決権を行使することができる事項(議決権行使条項付種類株式)等についても認められています(会108条1項)

2 定款を変更して、上記①の譲渡制限株式を設ける場合は、会社法309条3項の特殊決議が必要ですが、定款で同決議の定足数、議決権要件を加重することができます(会309条3項1号)。
定款を変更して上記③の取得条項付株式の定めを設ける場合は、株式の強制取得になるので、種類株式発行会社である場合を除き、株主全員の同意を得なければなりません(会110条)。
上記①についての定めを設ける定款変更に反対の株主は、会社に対して株式買取請求権を有します(会116条1項1号)。

Q. 株式の譲渡及び譲渡制限に関する規定はどういうものですか。譲渡制限を付しながら特定の場合に譲渡承認を不要とすることができますか。

  1. 会社法においては、株券不発行制度が原則であり、株券を発行する場合には定款でその旨定めることを要するとされています(会214条)。株券不発行会社においては、株式の譲渡は意思表示のみにより行われ、対抗要件も株主名簿の名義書換によるとされ、株券発行会社においては、譲渡に株券の交付を要し、その対抗要件は、当該会社に対しては株主名簿の名義書換その他の第三者に対しては株券の占有とされています(会127条、128条1項、130条)。
  2. 会社法は、子会社による親会社株式の原則的取得制限等の法律上の制限のほかに(会135条)、発行する全部の株式の内容として譲渡制限を付することができます。また、会社法においては、新たに、一部の株式についても譲渡制限を付ける、すなわち、譲渡制限種類株式を発行できることになりました(会108条1項4号)。この譲渡制限種類株式には、優先株式等種類株式に譲渡制限を付すことも含まれますが、譲渡制限に関してだけの種類株式を発行することも許容されています。
  3. 譲渡制限は、種類株式の場合を含め、原則としてすべての譲渡に適用されますが、定款で一定の場合は会社が承認したものとみなす旨の規定を設けることもでき(会107条2項1号ロ、108条2項4号)、特定の属性を有する者に対する譲渡、例えば、株主間の譲渡や従業員に対する譲渡等につき承認不要とすることもできるようになりました。

Q. 譲渡制限株式(全株式及び種類株式)の譲渡承認請求手続はどのようにするのですか。不承認の場合の株式買取請求はどうなりますか。

  1. 譲渡制限株式の譲渡は、全株式が譲渡制限された場合も種類株式の場合も、譲渡株主か取得者のいずれからか会社に対してその取得の承認の請求をすることとなります(会136条、137条1項)。譲渡しようとする株主は、単独で承認を請求することができますが、取得者から請求する場合は、利害関係人の利益を害するおそれがない場合として会社法施行規則24条で定める場合を除き、取得者と株主名簿に記載若しくは記録された者又はその相続人等一般承継人と共同でする必要があります(会137条2項)。上記承認請求には、譲渡する譲渡制限株式の数、譲受人の氏名又は名称を、不承認の場合の買取請求するときはその旨を明らかにする必要があります(会138条)。
    会社法では、原則を、取締役会設置会社では取締役会、それ以外では株主総会とした上で、定款の定めにより他の機関とすることができるものとされました(会139条1項)。そこで、取締役会設置会社でも承認機関を株主総会としたり、代表取締役とするようなことも可能です。
  2. 譲渡を不承認としたときは、会社は、株主総会の特別決議をもって対象となる譲渡制限株式を買い取るか、指定買取人を指定する必要があります(会140条、309条2項)。ただし、指定買取人の指定については、定款で予め指定することができ(先買権者の指定)、また、定款の定めをもって株主総会以外の機関の決定に委ねることもできます(会140条5項)。
  3. 買取請求をした者は、会社や指定買取人から買取りの通知を受けた後は、会社又は指定買取人の承認を受けないと買取請求の撤回をすることができません(会143条1項、2項)。
    上記買取りの通知を受けたときは、両者の間で売買価格の協議をすることになるが、通知後20日以内に裁判所に売買価格の決定の申立てをすることができます。上記協議が成立せず、売買価格決定の申立てもないときは、1株当たりの純資産額を基準に売買価格を定めることになります(会144条1項ないし7項)。
    会社が、譲渡承認請求を受けて2週間以内にこれについての決定通知をしないとき、及び同決定通知から40日以内に不承認の場合の買取通知をしないとき(指定買取人が上記譲渡承認請求についての会社の決定の通知の日から10日以内に買取通知をした場合を除く。)等の場合は、会社が譲渡承認をしたものとみなすこととされ、上記各期間については、定款で短い期間を定めることができるとされています(会145条、会社法施行規則26条)。
  4. 譲渡制限株式の譲渡制限が及ぶのは、株式売買等の特定承継の場合であって、譲渡制限株式であっても、相続や合併等の一般承継の場合には当然に移転することになります。しかし、一般承継の場合であっても、会社にとって好ましくない者が株主となることを避ける必要性があることは、特定承継の場合と変わらず、そのために、定款の定めにより、一般承継により譲渡制限株式を取得した者に対して、当該株式の売渡を請求できるものとすることができるとされています(会174条、次のQ&A参照)。

Q. 譲渡制限株式(全株式及び種類株式)の相続人等に対する売渡請求権の定めはどうなっていますか。

  1. 株式の譲渡制限制度は、当該株式が他人に譲渡される場合には、会社の承認を要することとし、会社にとって好ましくない者が当該株式の株主とならないようにするための制度です。
    会社法は、これを押し進めて、定款にその定めをすることによって、相続その他の一般承継により会社にとって好ましくない者が会社の株式を取得した場合に、当該株式を会社に売り渡すことを請求できることとしました(会174条)。この売渡請求は、会社が相続などの一般承継を知った日から1年以内に、その都度株主総会の特別決議によって、(a)請求をする株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)及び(b)その所有者の氏名又は名称を定めたうえ、その取得者に対して(a)を明らかにして請求しなければなりません。会社はいつでもこの請求を撤回することができます(会175条、176条、309条2項3号)。
  2. 売買価格は、会社と譲渡制限株式の一般承継者との協議により定めます。ただし、両者はいずれも売渡請求の日から20日以内に、裁判所に対し、売買価格の決定の申立てをすることができ、裁判所は、会社の資産状態その他一切の事情を考慮して売買価格を決定します。20日以内に裁判所に対する申立てがなされない場合は、その期間内に協議が調った場合を除き、売渡請求は失効します(会176条、177条)。

株主、株券に関する事項

Q. 株主に剰余配当金や残余財産分配請求権を与えないとすることができますか。

株主は、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利及び株主総会における議決権その他会社法の規定により認められる権利を有しますが、前二者の権利を全部与えない旨の定款の定めは無効です(会105条2項)。したがって、例えば議決権だけを有する株式を発行することはできません。他方、剰余金の配当を受ける権利又は残余財産の分配を受ける権利の一方だけしか与えない株式を定款で定めることは可能です。

Q. 剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会の議決権を株主ごとに異なる定めをすることができますか。

会社法においては、種類株式の内容をより多様化した(会108条)上、株主平等の原則を、会社は、株主を「その有する株式の内容及び数に応じて」平等に取り扱わなければならないと規定し(会109条1項)、株式の内容の差異を前提とした平等観念を明確にしています。のみならず、非公開会社では、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、株主総会の議決権に関する事項について、同一の種類株式を有する株主についても、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることを許容し(会109条2項)、非公開会社では、保有する株式数にかかわらず、株主は一人一議決権を持つと定めることもできます。これらは、非公開会社では、株主の異動が乏しく、株主相互の関係が緊密であることが通常であることから、かかる取り扱いを認めるニーズがあるとともに、特段の不都合がないために、認められたものです。

Q. 株主名簿に関する規定は、どのようになっていますか。

  1. 株券不発行会社の株式の譲渡は合意により、株券発行会社の株式の譲渡はそれに加えて株券の交付により行われますが(会128条1項)、いずれの場合にも、その移転は、取得者の住所、氏名を株主名簿に記載(記録)しなければ、株券発行会社においては会社に、株券不発行会社においては会社及び第三者に対抗できません(会130条)。また、株式の移転は、相続、合併などによっても生じます。これらの場合に生ずる株主名簿上の株主名と真実の株主名との不一致を解消させるために行われるのが株式の名義書換手続です。
  2. 株主名簿については、名義書換請求権及びその行使が原則として取得者と名簿上の株主又はその一般承継人との共同でなされるべきこととされている(会133条)など名義書換関係の規定が整備されています(会132条ないし134条)。
    なお、取得者が単独で名義書換を行うことができる場合については、会社法施行規則22条に規定されています。
    譲渡制限株式の名義書換については、①当該株式の取得について、譲渡者である株主あるいは株式取得者が譲渡等の承認を受けている場合、②会社が譲渡の承認を拒否した結果、指定された指定買取人が名義書換の請求をする場合、あるいは③相続などの一般承継により取得した場合以外は、名義書換の請求はできない旨定められました(会134条)。
  3. また、その閲覧・謄写請求についても、請求者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的でする場合等は、拒絶できる場合が定められ、いわゆる名簿屋の閲覧等の請求を拒絶できるようになりました(会125条3項)。
    名義書換や株主名簿の閲覧・謄写等については、株式取扱規則に定めることも多いようです。

Q. 株主名簿の基準日を定める方法、株主名簿の閉鎖制度は、どうなっていますか。

  1. 株主総会で議決権を行使したり、剰余金配当を受けるなどの株主としての権利を行使できる者は、本来、その時点における株主名簿上の株主であるはずです。しかし、株主の変動を考えると、株主総会開催時の株主を把握することは容易ではありません。そこで、一定の日において株主名簿に記載されている株主若しくは質権者を、その権利を行使することができる株主若しくは質権者と定めることができるという制度によります。
  2. 基準日の設定は、株式の名義書換えが停止されることはなく、基準日以後の名義書換えは、権利行使に関して考慮されないというものです。会社法においては、基準日の制度を採用した上(会124条1項)、実務上の強い要請から、株主総会における議決権の行使については、基準日以降に株式を取得した者についても、その全部又は一部を権利行使できるものと定めることができる。
    基準日は、権利を行使すべき日の前3か月以内の日でなければなりません(会124条2項)。また、基準日の設定は、定款に定めておかなくても、基準日の2週間前までに公告して定めることができますが、定款に定めておけば、その基準日については公告は必要ありません(同条3項)。

Q. 株券発行に関する定めは、どうなっていますか。

  1. 会社法は、株券は原則として発行されないこととし、定款で株券を発行する旨定めた場合に限って、株券を発行することができることとしました(会214条)。株券発行会社であることは登記事項です(会911条3項10号)。なお、定款で株券を発行する旨を定めても、非公開会社は、株主から請求がある時まで株券を発行しないことができます(会215条4項)。
  2. 株券不発行が原則化されたため、株券不発行会社について、株主は、当該株主について株主名簿に記載・記録された株主名簿記載事項の証明書の交付あるいは電磁的記録の提供を求めることができます(会122条)。同様に、株券不発行会社の登録株式質権者も、登録事項証明書の交付あるいは電磁的記録の提供を求めることができます(会149条)。
  3. 株券発行会社の株主は、株券の所持を希望しない旨申し出ることができることは従前と同じであり(会217条1項、株券不所持制度)、この場合には株券不発行状態となります。また、株券発行会社は、単元未満株式にかかる株券を発行しない旨を定款で定めることができます(会189条3項)。
    なお、既存の会社は、定款に株券不発行の定めがない場合には、整備法により、定款に株券を発行する旨の定めがあるものとみなされます(整備法76条4項)。

会社の機関全般

Q. 会社の機関及び機関構成の基本原則は、どうなっていますか。

株式会社は、株主総会と1人又は2人以上の取締役を置くことが必要です(会295条、326条1項)。株式会社は、さらに、株式の譲渡制限をするか否か、非大会社か大会社等かに応じて、定款の定めにより、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等の機関を置くことになります。

会社の機関の組合せについては、次のいずれかに該当しなければならないとされてます。

(a)非大会社の場合

  1. 株主総会+取締役+(会計参与)(注)
  2. 株主総会+取締役+監査役+(会計参与)
  3. 株主総会+取締役+監査役+会計監査人+(会計参与)
  4. 株主総会+取締役会+会計参与
  5. 株主総会+取締役会+監査役+(会計参与)
  6. 株主総会+取締役会+監査役会+(会計参与)
  7. 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人+(会計参与)
  8. 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人+(会計参与)
  9. 株主総会+取締役会+指名委員会等+会計監査人+(会計参与)
  10. 株主総会+取締役会+監査等委員会+会計監査人+(会計参与)

(b)非公開会社・大会社の場合

  1. 株主総会+取締役+監査役+会計監査人+(会計参与)
  2. 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人+(会計参与)
  3. 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人+(会計参与)
  4. 株主総会+取締役会+指名委員会等+会計監査人+(会計参与)
  5. 株主総会+取締役会+監査等委員会+会計監査人+(会計参与)

(c)公開会社・非大会社の場合

  1. 株主総会+取締役会+監査役+(会計参与)
  2. 株主総会+取締役会+監査役会+(会計参与)
  3. 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人+(会計参与)
  4. 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人+(会計参与)
  5. 株主総会+取締役会+指名委員会等+会計監査人+(会計参与)
  6. 株主総会+取締役会+監査等委員会+会計監査人+(会計参与)

(d)公開会社・大会社の場合

  1. 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人+(会計参与)
  2. 株主総会+取締役会+指名委員会等+会計監査人+(会計参与)
  3. 株主総会+取締役会+監査等委員会+会計監査人+(会計参与)

会社法の定める大会社とは、要旨次の要件のいずれかに該当する株式会社です(会2条6号)。

  1. 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること
  2. 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であること

(注)( )内に記載した機関は、設置しても設置しなくてもよい機関です。

株主総会に関する事項

Q. 株主総会の権限は、どのようになっていますか。

取締役会非設置会社の場合においては、株主総会は、会社法に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その株式会社に関する一切の事項について、決議をすることができます(会295条1項)。例えば、年間事業計画の設定は法定の決議事項ではなく、取締役が決定することができますが、株主総会において決議することも可能であり、決議の内容は取締役を拘束します。

取締役会設置会社の場合においては、株主総会は、会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができます(会295条2項)。

いずれの場合においても、株主総会の法定決議事項、例えば、取締役などの役員の選任・解任事項及び会社の基礎に根本的な変動を生じる事項等につき、取締役等株主総会以外の機関が決定できるとする定款の定めは無効です(会295条3項)。

Q. 株主総会の招集時期及び招集権者について、定款にはどのように記載するのですか。

  1. 定時株主総会は、毎事業年度の終了(決算期)後一定の時期に招集しなければならず、決算期が年二度以上ある会社は、決算期ごとにこれを招集しなければなりません(会296条1項)。臨時株主総会は、必要がある場合に随時これを招集します(同条2項)。
    定時株主総会の招集時期については、「毎年○月に招集する。」という方式と「毎事業年度の末日の翌日から3か月以内に招集する。」という方式があります。後者は、通常、会社法124条1項に規定する基準日を決算期と定めること、及び同条2項で基準日の効力の及ぶ範囲が最長3か月と規定されている関係からの表現です。株主総会の時期の定めは任意的記載事項です。
  2. 株主総会の招集は、会社法に特別の定めがある場合(少数株主による総会招集ー会297条)を除き、原則として、取締役会の決議により、取締役会非設置会社においては取締役の過半数をもって(会298条1項、4項)決定し、取締役が招集します(会296条3項)。代表取締役を定めているときは代表取締役が招集するのが通常です。定款に招集権者を記載する必要はありませんが、代表取締役が複数いる場合等の招集権者を明らかにするため、その他の理由から、定款に記載するのが通常です。また、招集権者に事故があるときの代行についても記載することが多いようです。

Q. 株主総会の招集地についての規定は、どうなっていますか。

株主総会は、本店の所在地又はこれに隣接する地において招集するのが普通ですが、会社法は、株主総会の招集地についても、必要があれば、これ以外の場所であっても、定款に株主総会の開催地を定めておけばよいとされています。もっとも、株主の議決権行使を著しく阻害するような招集地を定めることは、株主総会の招集手続が著しく不公正なときに該当するとして、総会決議の取消しの訴えの事由となります(会831条1項1号)。

Q. 株主総会の招集通知について、注意すべき点は何ですか。

  1. 株主総会の招集通知に関しては、会日の2週間前までに、各株主に通知を発送することを要し(会299条1項)、2週間の意味は、通知を発した日の翌日から起算して会日までの間に14日の日数が存することが必要であると解されています。これが原則です。書面投票・電子投票を採用しているとき又は取締役会設置会社の場合は、通知は書面又は電磁的方法による必要があります(会299条2項、3項)。
  2. 例外として、非公開会社では、次のようになります(会299条1項)
    (a)書面投票・電子投票を認めるときは、原則どおり2週間前
    (b)(a)以外のときは、1週間
    (c)取締役会非設置会社では、定款でさらに短縮可能(相対的記載事項)
  3. 議決権を行使できるすべての株主の同意があるときは、書面投票・電子投票を採用している場合を除き、招集手続を省略することができます(会300条)。
  4. 書面等による議決権行使を採用しない場合で、取締役会非設置会社の場合には、通知方法に制限はなく、口頭でもかまいません(会299条2項参照)。そうでない場合には、書面又は電磁的方法で行なう必要があります。書面投票・電子投票による場合には、株主に対し、参考書類(議案の説明書類)及び議決権行使書面(書面投票での投票用紙)を交付(電磁的方法も可)する必要があります(会301条、302条)。招集通知を電磁的方法により受領することを承諾した株主に対しては、原則として、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供すれば足り、株主から請求がある場合に限り、議決権行使書面の交付をすれば足ります(会301条2項)。

Q. 株主総会の決議について、注意すべき点は何ですか。

  1. 株主総会の決議(普通決議)については、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、その議決権の過半数の賛成により(議決権要件)、成立するものとされています(会309条1項)。普通決議においては、定款で定足数を排除又は軽減することが認められているので、実務では定足数を排除するため、定款に「出席した株主の議決権の過半数をもって決定する。」旨定める例が多いようです。なお、決議要件(出席株主の議決権の過半数)を軽減することはできません。
  2. 株主総会の特別決議については、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数をもって(議決権要件)、行わなければなりません(会309条2項)。
    なお、定款で、定足数を「3分の1以上の割合」と定めることも、決議要件を「3分の2を上回る割合」と定めることができますし、また、定款で、定足数及び決議要件に加えて、「一定の数以上の株主の賛成を要する」旨の頭数要件を定めることもできます(会309条2項)。
    株主総会の特別決議を要する案件は、会社法309条2項各号に規定しています。
  3. 株主総会の特殊決議については、2種類あります。
    その第1は、会社法309条3項各号が定める場合における株主総会の決議に要求されます。この場合の決議は、議決権を行使することができる株主の半数以上で(頭数要件)、当該株主の議決権の3分の2以上の多数をもって(決議要件)、行わなければなりませんが、定款で、頭数要件を「半数を上回る割合」に、決議要件を「3分の2を上回る割合」に定めることができます(会309条3項)。
    株主総会の特殊決議の第2は、非公開会社において、①剰余金の配当を受ける権利、②残余財産の分配を受ける権利、③株主総会の議決権につき、株主ごとに異なる取扱いを定める定款変更等、会社法109条2項の規定による定款の変更(当該定款の定めを廃止する場合を除く。)を行う株主総会の決議に要求されます(会309条4項)。
    この場合の決議は、総株主の半数以上で(頭数要件)、総株主の議決権の4分の3以上の多数をもって(決議要件)、行われなければなりませんが、定款で、頭数要件を「半数を上回る割合」に、決議要件を「4分の3を上回る割合」に定めることができます(会309条4項)。

Q. 議決権の行使について、どのような規定がされていますか。

  1. 代理行使
    株主は、代理人によってその議決権を行使することができ(会310条1項)、この場合,株主又は代理人は、総会ごとに、代理権を証明する書面を株式会社に提出するか、株式会社の承諾を得て、書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することが必要です(会310条1項ないし3項)。
    議決権行使の代理人の資格を株主に制限する旨の定款の規定の効力については、学説上争いがありましたが、判例は有効であるとしています(最判昭和43年11月1日・民集22巻12号2402頁)。行政先例も同様です(昭和44年3月6日民事甲381号民事局長回答)。なお、代理人は1人の株主について1人を原則とし、会社は総会に出席できる代理人の数を制限できます(会310条5項)。
  2. 書面・電磁的方法による議決権の行使
    書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、これを株式会社に提出することによって行うことができ(会311条1項)、電磁的方法による議決権の行使は、株式会社の承諾を得て、議決権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により株式会社に提供することによって行うことができます(会312条1項)。
    株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の数が1000人以上の会社には、書面による議決権の行使が強制されます(会298条2項本文)。
  3. 議決権の不統一行使
    株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができます(会313条1項)。例えば、株式の信託を受けている株主が、信託している株主の意向に従って、株式の一部で議案に賛成し、残りの株式については反対するような場合です。
    取締役会設置会社においては、議決権の不統一行使をしようとする株主は、株主総会の日の3日前までに、会社に対しその有する議決権を統一しないで行使する旨及びその理由を通知しなければなりませんが、取締役会非設置会社においては、事前通知は不要です(会313条2項)。会社は、議決権の不統一行使をする者が、上記信託を受けている場合などのように他人のために株式を有する者でない場合は、議決権の不統一行使を拒否することができます(会313条3項)。
  4. 株主総会開催の省略(書面決議)
    取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき議決権を行使することができる株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなすことができます(書面決議の制度、会319条)。株主総会の決議があったものとみなされる場合についても、決議があったものとみなされた事項等を内容とする議事録を作成する必要があります(会社法施行規則72条4項)。

取締役

Q. 取締役の員数には、どのような定め方がありますか。

株式会社には、1人又は2人以上の取締役を置かなければならず(会326条1項)、取締役会設置会社には、取締役は3人以上必要です(会331条5項)。公開会社は取締役会を設置しなければならないので(会327条1項1号)、取締役が1人でもよいのは、非公開会社のうち取締役会を設置しない会社です。これらの規定を守る限り、定款で取締役の数の最下限、最上限をどのように定めることも自由です。任意的記載事項です。何名以内と上限を定める方法が比較的多いが、何名以上と下限を定める方法、何名以上何名以下というように上限と下限とを定める方法等いろいろの定め方があります。取締役の員数が、法律又は定款で定める最低数を欠くこととなるときに備えて、予め補欠の選任をすることができます(会329条3項、会社法施行規則96条)。最低数を欠かない以上、補欠を選任する必要がないから、「1名以上3名以内」又は単に「3名以内」と定めるのが便宜です。

Q. 社外取締役とは何ですか。

社外取締役は、株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいいます(会2条15号)。

  1. 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の会社法363条1項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
  2. その就任前10年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与又は監査役であったことがある者にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前10年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。
  3. 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。
  4. 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。
  5. 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は2親等内の親族でないこと。

以上のとおり、親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人は社外取締役となることができないので、親子会社間で社外取締役を兼務することはできません。他方、過去に親会社等の取締役等であったことがないことを社外取締役の要件としていないので、過去に親会社等の取締役等であっても、社外取締役となることができます。また、兄弟会社の業務執行取締役等以外の取締役でないことを社外取締役の要件としていないので、兄弟会社の業務執行取締役等以外の取締役であっても、社外取締役となることができます。

Q. 取締役の資格について、注意すべき点は何ですか。

取締役の欠格事由については会社法331条1項に規定されています。同項によれば、

  1. 法人、
  2. 成年被後見人若しくは被保佐人又は外国の法令上これらと同様に取り扱われている者等は、取締役とはなれません。
    破産宣告を受け復権していない者は欠格事由から除外されましたが、会社と取締役との関係は委任に関する規定に従うから(会330条)、破産手続開始決定は委任の終了事由とされており(民法653条2号)、破産した取締役は、いったん取締役たる地位を喪失することになります。
    公開会社は、定款によっても取締役を株主に限るとすることはできませんが、非公開会社においては株主に限定することは可能です(会331条2項)。なお、委員会設置会社の取締役は、当該委員会設置会社の支配人その他の使用人を兼ねることはできません(同条4項)。

Q. 取締役の選任方法について、注意すべき点は何ですか。

  1. 取締役は、株主総会において選任します(会329条1項)。もっとも、会社設立時は、発起設立の場合は発起人において(会38条1項)、募集設立の場合は創立総会において(会88条)、設立時取締役を選任します。なお、発起設立の場合、定款で設立時取締役として定められた者は、出資の履行が完了した時に、設立時取締役に選任されたものとみなされます(会38条4項)。設立時取締役は、会社の成立と同時に取締役となります(会38条1項)(設立時役員等については、こちらを参照)。
    取締役の選任は、株主総会の専決事項であるから、これを総会外の他の機関、例えば取締役会とか第三者に委ねることはできません。
    取締役選任の決議は、定款で特別の定めがある場合を除き、普通決議です(会309条1項)。定款で定足数を3分の1に軽減するのが通常ですが、定款で定める場合でも、定足数を議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1未満に軽減することはできません(会341条)。また、定款で議決要件を加重することができます(341条)。
  2. 取締役の選任に関し、累積投票の制度があります。2人以上の取締役を選任する場合、定款に別段の定めがあるときを除き、株主から株主総会の日の5日前までに請求があった場合、累積投票によらなければなりません(会342条)。
    定款で累積投票によらない旨を定めることができます(会342条1項)。累積投票制度は、批判が多く、改正前商法においても、ほとんどの会社の定款において累積投票の制度を全面的に排除していました。相対的記載事項です。

Q. 取締役の解任について、注意すべき点は何ですか。

取締役を含む役員及び会計監査人は、何時でも、株主総会の決議で解任することができます(会339条1項)。選任の場合と同様に、定款で特別の定めをしない限り、普通決議であり(改正前商法は解任については特別決議であったが、会社法は株主の意向を会社経営に反映させるため、株主の利益に反する取締役の解任を容易にしました。)、議決権を行使しうる株主の議決権の過半数(定款で3分の1まで引き下げ可能)を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の決議をもってこれを行います。定款で議決要件を加重することは可能です(会341条)。したがって、解任の表決権を出席株主の議決権の3分の2以上に引き上げる規定を置くことにより、改正前商法における議決要件と同様にすることが可能です。

なお、累積投票制度によって選任された取締役については、少数派の株主の意向を反映させるという累積制度の趣旨に鑑み、その解任については特別決議を要件としています(会309条2項、342条6項)。また、取締役選任付種類株主総会で選任された取締役を含む役員及び会計監査人の解任は、同種類株主総会で行います(会347条2項)

Q. 取締役の任期について、注意すべき点は何ですか。

  1. 委員会設置会社以外の会社の取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものの決算期に関する定時株主総会の終了時までであるが、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することができます(会332条1項)。
    非公開会社(委員会設置会社を除く。)においては、定款で取締役の任期を選任後10年以内の最終の決算期に関する定時株主総会の終了時までと伸長することができます(同条2項)。非公開会社については、株主が変動することも少ないため、株主に対して取締役の信任を頻繁に問う必要性が乏しい場合もあり、それぞれの会社が、その実態に応じて取締役の任期を定めることができることになります。
    なお、委員会設置会社の取締役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時までです(同条3項)
    更に、会社法332条4項各号に規定する定款の変更をした場合は、取締役の任期は、当該定款変更の効力が生じた時に満了します(同条7項)。
  2. 増員等によって通常の改選時期と異なる時期に選任された取締役は、他の取締役と改選時期がずれるため、これを調整して他の取締役の任期の満了と符合させることは差し支えなく、この趣旨の規定を定款に設けているのが通常です。

Q. 代表取締役及び役付取締役に関する定めの留意点は何ですか。

  1. 取締役会非設置会社では、取締役が会社を代表します(会349条1項)。2人以上いる場合も、各自会社を代表するが(同条2項)、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができ(同条3項)、この場合には他の取締役は代表権を有しません。取締役会設置会社では、取締役会で取締役の中から代表取締役を選定します(会362条3項)。
    代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有し(会349条4項)、これらの権限に制限を加えた場合、善意の第三者に対抗できません(同条5項)。
  2. 代表取締役の員数については法律上の制限はなく、定款で自由にその員数を定めることができます。代表取締役が数人いる場合には、各自が代表権を有します。共同代表を禁止する規定はないので、定款等により、代表取締役が共同して会社を代表すべき旨の定めをすることはできますが、これは、代表権の内部的制限なので善意の第三者に対抗できません。
    代表取締役の任期については、会社法は規定を設けていないが、取締役であることが前提になります。なお、代表取締役のうち少なくとも1名は日本に住所を有することが必要です。
  3. 会社法上の取締役と代表取締役のほか、会長、社長、副社長、専務取締役、常務取締役が設けられ、その地位を明確にする規定を置いている例が多く、これらは役付取締役と呼ばれ、他の取締役と区別されています。

取締役会

Q. 取締役会の設置に関する規定はどのようになっていますか。

会社法では、取締役会は必ず設置される機関ではなく、設置が強制されるのは、公開会社、監査役会設置会社及び委員会設置会社です(会327条1項)。設置が強制されない会社でも、定款の定めにより任意に設置することは可能であるが(会326条2項)、取締役会を設置すると、取締役は3人以上が必要で(会331条4項)、委員会設置会社を除き監査役を設置することが強制されます(会327条2項。ただし、非公開会社で会計参与設置会社については、会計監査人設置会社を除き、監査役設置義務を免れます)。

Q. 取締役会の招集については、どのようになっていますか。

  1. 取締役会は、各取締役が招集するのが原則ですが、定款又は取締役会で招集権者を定めることができます(会366条1項)。取締役会において招集権者を定める例は少なく、定款において定めているのが通常です。また、定款で招集権者を議長として定める規定を置くことが多いようです。なお、定款で招集権者を定めても、招集権者でない取締役は、必要があるときは、招集権者に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができます(同条2項)。
  2. 取締役会を招集するには、会日より1週間前までに各取締役(監査役設置会社においては、各取締役及び各監査役)に対し、招集通知を発送する必要があります。もっとも、この招集期間は、定款の定めにより短縮することができます(会368条1項)。相対的記載事項です。

Q. 取締役会の決議方法について、どのような点を注意すべきですか。

  1. 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その過半数をもって行います。この要件を軽減することは、定款の定めをもってしてもできません。定足数、議決要件とも定款の定めをもって加重することができますが(会369条1項)、定款によって要件を加重する例はほとんどありません。職務執行停止中の取締役や決議について特別の利害関係ある取締役は、議決に加わることができず(同条2項)、定足数からも除外されます。
    定款中に、「可否同数のときは、議長が決する。」旨の定めをする例があります。議長が当初の決議に参加しなかった場合は有効と解する余地はありますが、参加した上で、上記定めをする場合は問題があります。先例は、議長が当初の決議に参加したか否かを問わず、決議要件の軽減になるから無効であると解しています(昭和34年4月21日民事甲第772号民事局長回答)。
  2. 取締役会設置会社は、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案した場合において、当該提案につき取締役(当該事項につき議決に加わることができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案につき異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなす旨を定款で定めることができます(会370条)。

Q. 取締役を含む役員等の会社に対する責任の軽減等の規定は、どのような内容になっていますか。

1 役員等の会社に対する責任の免除、軽減、責任限定契約

役員等の会社に対する責任の軽減等につき、平成26年改正会社法により、社外取締役、社外監査役の社外性の要件が厳格化されたことにより、業務執行性、すなわち「業務執行取締役等」と「非業務執行取締役等」などによる区分に変更されました。

なお、平成26年改正会社法では、「業務執行取締役等」は、「業務執行取締役」(株式会社の会社法363条1項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人をいう(会2条15号イ)と定義されており、以下、「非業務執行取締役等」とは、取締役(業務執行取締役等であるものを除く。以下、「非業務執行取締役」ともいう。)、会計参与、監査役、又は会計監査人をいうとされています。

  1. 取締役を含む役員(取締役、会計参与、監査役)及び執行役、会計監査人(以下、本設問において「役員等」ともいう。)は、会社に対し、善管注意義務を負い、取締役は、忠実義務を負っています。
    役員等が、その任務を怠り会社に損害を与えれば、その損害を賠償しなければなりません(会423条1項)。
  2. この任務懈怠による責任は、総株主の同意がなければ免除することができないのが原則です(会424条)。
  3. しかし、任務懈怠の行為のうち、職務を行うにつき善意にして重大な過失のなかった行為(すなわち軽過失による行為)については、①株主総会の特別決議による方法(会425条1項、309条2項8号)、②監査役設置会社(取締役が2人以上ある場合に限る。)、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社においては、定款の授権に基づく取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)による方法(会426条)、の2つの方法により、役員等の責任を事後に軽減(一部免除)することができるとされています。②の授権の定めは、登記事項です(会911条3項24号)。
    なお、監査役の権限を会計に関するものに限定している場合(会389条1項)は、監査役設置会社とならず(会2条9号)、上記②の役員等による責任の一部免除の規定を定款に置くことはできません(会426条1項)。
  4. また、③「非業務執行取締役等」、すなわち、取締役(業務執行取締役等ですものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人については、定款の定めがあれば、会社との間で責任を軽減する旨の契約(責任限定契約)を締結することができます(会427条)。(注)
    (注)平成26年改正会社法により、責任限定契約を締結できる者について、取締役につき従来の「社外取締役」が社外取締役を含む非業務執行取締役に、監査役につき「社外監査役」が社外か否かを問わず全員に、それぞれ拡大変更されました。
  5. ②③の定款の規定は、相対的記載事項です。

2 責任軽減限度額

  1. 役員等の責任を軽減することができる額には限度があります。すなわち、賠償の責任を負う額から、①代表取締役又は代表執行役については6年分、②代表取締役以外の取締役(業務執行取締役等あるものに限る。)又は代表執行役以外の執行役については4年分、③取締役(①、②に掲げるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人については2年分の会社から得る報酬等(当該役員等がその在職中に株式会社から職務執行の対価として受け、又は受けるべき財産上の利益の1年間当たりの額に相当する額として法務省令で定める方法により算定される額)と当該役員等が当該株式会社の新株予約権を引き受けた場合における有利発行に係る新株予約権に関する財産上の利益に相当する額との合計額(「最低責任限度額」)を控除して得た金額を限度として、株主総会の決議によって免除することができます(会425条)。上記法務省令の定めは、会社法施行規則113条、114条です。
  2. 上記決議があった場合には、会社が決議後に役員等に退職慰労金等を与えるとき、又は当該役員等が上記(1)の新株予約権を決議後に行使し、若しくは譲渡するときは、株主総会の承認を受けなければなりません(会425条4項)。

3 定款規定に基づく取締役等による責任軽減の要件

  1. 定款の規定に基づく取締役の過半数の同意又は取締役会の決議による責任軽減(上記1(3)②)の積極的要件は、次のとおりです(会426条1項、2項、425条3項)。
    1. 職務を行うにつき善意でかつ重大な過失のないこと
    2. 定款に、取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)によって法令の限度で役員等の任務懈怠責任を免除することができる旨の規定(授権規定)があること(この定めを置くためには、上記1(3)②のとおり、監査役設置会社(取締役が2人以上ある場合に限る。)、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社である必要がある。)
    3. 取締役(当該責任を負う取締役を除く。)の過半数の同意(取締役会設置会社にあっては、取締役会の決議)を得ること
    4. 免除について取締役の同意を得る場合又は免除の議案を取締役会に提出するについて、監査役設置会社においては各監査役の、監査等委員会設置会社は各監査等委員、指名委員会等設置会社は各監査委員の同意を得ること
    5. 責任の原因となった事実の内容、当該役員等の職務の執行状況その他の事情を勘案して「特に必要と認めたとき」であること
  2. なお、⑥総株主の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主が、一定の期間内に異議を述べたときは、会社は、取締役等による責任軽減を行えなくなります(会426条7項)。
    この場合でも、株主総会の特別決議(上記1(3)①の方法)により責任軽減を行うことはできると思われます。
    上記⑥の異議の申述の前提として、定款の規定に基づく取締役若しくは取締役会の決議による責任軽減の同意又は決議をしたときは、取締役は、遅滞なく、免除すべき理由や免除額等会社法425条2項各号に定める事項及び免除に異議がある場合には1か月以内の一定の期間内に異議を述べるべきことを株主に通知しなければなりません(公開会社においては、公告でもよい。会426条3項、4項)。

4 責任限定契約

  1. 非業務執行取締役等、すなわち、取締役(業務執行取締役等であるものを除く。)、会計参与、監査役又は会計監査人についての定款に基づく免責契約(責任限定契約)による責任限定の要件は、次のとおりです
    1. 最低責任限度額を定款で定めること
    2. この最低責任限度額の範囲内で、「あらかじめ会社が定めた額」と「2年分の報酬額(最低責任限度額)」とのいずれか高い額を限度として非業務執行取締役等が任務懈怠責任について賠償責任を負う旨の契約を締結することができる旨を定款で定めること
    3. 会社が当該契約を非業務執行取締役等と締結すること
    4. 当該非業務執行取締役等が職務を行うにつき善意かつ重大な過失のないこと
  2. 上記契約を締結した非業務執行取締役等が当該株式会社の業務執行取締役等に就任したときは、上記契約は、将来に向かってその効力を失う(会427条2項)。
  3. 契約で定める最低責任限度額は、上記のように報酬額との関連があるから、責任限度額を定めるには、報酬額を考慮しながら定める必要があると思われます。
    なお、定款における免責契約の最低責任限度額の定めについて、通常は、①「○○万円以上であらかじめ定める額又は法令が規定する額のいずれか高い額とする」と定めますが、ときにより、②「○○万円以下であらかじめ定める額又は・・・」や③「○○万円以内であらかじめ定める額又は・・・」とする定款もないではありません。定款に規定を設ける趣旨からすれば、①の表現が相当ですが、②や③でも、法令の規定する上限があるので、違法ということはできないでしょう。
    また、④単に「当該契約に基づく賠償責任額は、法令に定める最低責任限度額とする。」としても、法令に定める最低責任限度額をそのまま定款で定める下限としただけのことであり、このような定め方も許されると思われます。
  4. この定款の定めは、登記事項です(会911条3項25号)。

Q. 取締役の報酬、賞与及び退職慰労金は、どのように定めるのですか。

取締役に対する報酬、賞与及び退職慰労金等、会社から職務執行の対価として受ける財産上の利益(以下「報酬等」という。)については、次の事項について定款で定めないときは、株主総会の決議で定めることとされています(会361条1項)。

  1. 金額が確定した報酬等については、その額
  2. 金額が確定しない報酬等については、その具体的算定方法
  3. 金銭以外の報酬等については、その具体的内容

これらの事項を定款で定めると、変更の都度、定款変更の手続をとる必要が生じるので、実務上は、定款にこうした定めがされることは稀です。なお、取締役に対する報酬等につき、定款で「株主総会の決議によりこれを定める。」旨の規定がされることが少なくありませんが、これは法令の規定と同じことを書いたのみで特別の意味を持たない注意的な規定です。

Q. 委員会設置会社とは、どのような会社をいうのですか。定款にどのように定めるのですか。

  1. 指名委員会等設置会社とは、アメリカ型のコーポレート・ガバナンス制度にならって取り入れられた制度で、取締役会の決議により取締役の中から選任された3人以上の委員で構成される「指名委員会」、「報酬委員会」、「監査委員会」の設置を義務付けられ(会2条12号、404条1項ないし3項)、執行部門として取締役会で選任された1人又は2人以上の業務執行を担当する執行役を置き(会402条1項、2項)、取締役会と執行役を分離することにより、取締役会の監督機能を強化し、また、計算書類の監査を行う会計監査人を設置し、上記「監査委員会」を設置することにより、監査役は置かないこととする会社です(会327条4項、5項)。会社の規模にかかわらず、すべての株式会社が委員会設置会社となることができます(会326条2項)。
    上記各委員会は、取締役3人以上で構成され、各委員会の委員の過半数は、社外取締役でなければなりません(会400条1項、3項)。
  2. 執行役は、委員会設置会社の業務を遂行します。取締役会は、執行役の中から代表執行役を定めなければなりません。執行役が1人の場合は、その執行役が代表執行役となります(会420条1項)。執行役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度の最終のものに関する定時株主総会の終結後最初に招集される取締役会の終結の時までですが、定款でその任期を短縮することができます(会402条7項)。
    執行と監督の分離の見地から、委員会設置会社の取締役は、原則として業務を執行することはできず(会415条)、当該会社の支配人その他の使用人を兼ねることができません(会331条3項)。取締役の任期は1年です(会332条3項)。取締役は執行役を兼ねることができます(会402条6項)。委員会設置会社の取締役及び執行役についても、委員会非設置会社の取締役と同様にその賠償責任の軽減が認められています(会425条1項、426条1項)。
  3. 定款では、委員会については、独立の章とはせず、取締役・取締役会の章に規定する例が多いが、独立した章とする例も少なくありません。また、執行役に関する規定とともに独立した章とする例も見られます。取締役・取締役会の章に規定している場合には、章の名称を「取締役、取締役会及び委員会」あるいは「取締役・取締役会等」とするのが一般的です。また、委員会と執行役に章を分ける場合は、執行役に関する章を後にする例が多いようです。
    独立した章として規定する場合、第○章「委員会」として、第○条(委員会の設置)、第○条(選定)、第○条(委員会規則)、第○章「執行役」として、第○条(執行役の員数)、第○条(執行役の選任)、第○条(執行役の任期)、第○条(代表執行役等)等が記載されるのが通常です。

Q. 取締役の競業取引及び利益相反取引の責任について、注意すべき点は何ですか。

  1. 取締役は、会社法356条1項に規定する競業取引及び利益相反取引をしようとするときは、取締役会設置会社においては取締役会の承認を、取締役会非設置会社においては株主総会の普通決議による承認を必要とします(会356条、365条)。
    競業取引の場合には、承認を得ずに競業を行った取締役はそれだけで任務懈怠です。会社に対し損害賠償の責任を負い、承認を得た場合でも、任務懈怠があれば損害賠償の責任を負います(会423条1項)。
  2. 利益相反取引の場合にも、原則として過失責任制をとり任務懈怠の場合に責任を負うことになります。①利益相反取引を行った取締役又は執行役、②当該取引をすることを決定した取締役又は執行役、あるいは③当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役は、任務懈怠が推定されます(会423条3項)。
    この場合の責任も、株主総会決議又は定款授権による一部免除制度(会425条、426条)及び責任限定契約(会427条)の対象になりますが、自己のために利益相反取引をした取締役については、総株主の同意以外に免責は認められません(会424条、428条)。

Q. 取締役会設置会社と取締役会非設置会社との違いの留意点は何ですか。

  1. 公開会社は取締役会を設置しなければならないが、非公開会社の場合には、監査役会設置会社及び委員会設置会社を除き、取締役会の設置を強制されることはありません(会327条1項)。
    取締役会設置会社においては、株主総会の決議事項が減少し、株主総会を通じた株主の関与が弱くなる分を補充するため、原則として、会計監査権限と業務監査権限を有する監査役(監査役会を含む。)又は3委員会のいずれかを設置しなければなりませんが、非公開会社(大会社を除く。)について会計参与を置く場合は、監査役の設置は必要的ではありません(会327条2項)。
    大会社(非公開会社及び委員会設置会社は除く。)の場合は、監査役会及び会計監査人の設置が必要であり(会328条1項)、非公開会社の大会社については会計監査人の設置が必要的です(同条2項)。
    取締役会非設置会社では、非大会社である限り、監査役、会計参与の設置は自由であり、取締役1名のみという機関設計も可能です。ただし、大会社の場合は(委員会設置会社を除く。)、監査役及び会計監査人の設置が必要です。
    取締役会非設置会社は、監査役会及び3委員会を設置できません(会327条1項2号、3号)。
  2. 取締役会設置会社では、株主総会は、法定の専権事項及び定款所定事項についてのみ決定権限を有します(会295条2項)。
  3. 取締役会設置会社は、定款に定めることにより、1事業年度の途中に1回に限り、取締役会の決議により剰余金の配当(中間配当)を実施することができますが、取締役会非設置会社は、この中間配当の実施をすることができません(会454条5項)。もっとも、取締役会設置の有無に関わらず、臨時株主総会の決議により、回数の制限なく、期中に剰余金の分配を行うことができます(会454条1項)。

Q. 会社設立時における取締役等の役員等の選任について、注意すべき点は何ですか。

  1. 発起設立の場合の設立時役員の選任手続等は、次のとおりです。
    発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく設立時取締役(株式会社の設立に際して取締役になる者をいいます。取締役会設置会社では、3人以上必要です(会39条1項)。)を選任する必要があります(会38条1項)。また、設立しようとする株式会社が、①会計参与設置会社である場合は、設立時会計参与(株式会社の設立に際して会計参与となる者をいいます。)を、②監査役設置会社である場合は、設立時監査役(株式会社の設立に際して監査役になる者をいいます。監査役会設置会社では、3人以上必要です(会39条2項)。)を、③会計監査人設置会社である場合は、設立時会計監査人(株式会社の設立に際して会計監査人になる者をいいます。)を、選任する必要があります(会38条2項)。
    あらかじめ、定款をもって設立時取締役、設立時会計参与、設立時監査役又は設立時会計監査人を定めることができ、定款で設立時役員等に定められた者は、出資の履行が完了した時にそれぞれ設立時役員等に選任されたものとみなされます(同条4項)。
  2. 募集設立の場合の設立時役員等の選任手続等は、次のとおりです。
    設立時役員等は、創立総会で選任しなければなりません(会88条)。ただし、種類株主総会の決議で取締役又は監査役を選任する種類株式(会108条1項9号)を発行する場合には、その種類株式に関する定款の定めの例に従い、当該種類の設立時発行株式の種類株主を構成員とする種類創立総会の決議によって選任します(会90条)。

会計参与

Q. 会計参与の選任、解任、員数及び資格について、注意すべき点は何ですか。

  1. 会計参与は、主として中小企業の計算の適正化を図るために、会社法により新設された役員で任意設置機関です。既存の株式会社のうち、圧倒的多数が非公開の非大会社であるわが国においては、従来、非大会社の計算書類等に対する信頼度が低かったといわれており、そうした批判に応えるため、一定の資格者が取締役等と共同して計算書類等の作成に関与することにより信頼を高めることを目的として設けられたものであり、定款の定めによりどのような類型の会社においてもこれを設置することができます(会326条2項)。その選任及び解任は、いずれも株主総会の決議によります(会329条1項、339条1項)。あらかじめ補欠の会計参与を選任しておくこともできます(会329条3項)。
  2. 会計参与の員数には制限がなく、定款で特定の員数を定めておくこともできるし、何名以上とする、又は何名以内とする、などと定めることもできます(ただし、会社の規模等にもよるが、複数名を置く必要性は高くないと思われます。)。
  3. 会計参与は、公認会計士若しくは税理士(いずれも法人を含む。)でなければならず、また、当該株式会社又はその子会社の取締役、監査役若しくは執行役又は支配人その他の使用人、業務停止処分を受けた者等はなることができません(会333条1項ないし3項)。
    会計監査人設置会社がさらに会計参与を設置することは可能ですが、公認会計士が会計参与に選任されている場合には、その者がその会社の会計監査人になることはできません(会337条3項1号)。また、会計監査人である公認会計士を会計参与に選任した場合には、会計監査人の欠格事由に当たることになり、会計監査人はその資格を失うことになります。

Q. 会計参与の任期は、どうなっていますか。

会計参与の任期については、取締役の任期の規定が準用され、原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうちの最終のものに関する定時株主総会の終結の時までですが、定款又は株主総会の決議でこれを短縮することができます(会334条1項、332条1項)。また、委員会設置会社を除く非公開会社においては、定款により、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができます(会334条1項、332条2項)。委員会設置会社における会計参与の任期は、原則として1年です(会334条1項、332条3項)。

なお、会計参与設置会社が会計参与を置く定款の規定を廃止する旨定款を変更した場合には、会計参与の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了します(会334条2項)。

Q. 会計参与の報酬等についての留意点は何ですか。

会計参与の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定められます(会379条1項)。また、会計参与が2人以上ある場合において、各会計参与の報酬等について定款の定め又は株主総会の決議がないときは、当該報酬等の範囲内で、会計参与が協議して定めることになっています(同条2項)。ただし、委員会設置会社においては、会計参与の報酬は、個人別の報酬等を報酬委員会が定めることになります(会404条3項)

監査役及び監査役会

Q. 監査役及び監査役会に関する法の規制は、どのようになっていますか。

  1. 非公開非大会社では、①監査役(又は監査役会)のみ、②会計参与のみ、③監査役(又は監査役会)と会計監査人、④監査委員会(委員会設置会社)と会計監査人のいずれかの類型を選択することが可能となったほか、特に何らの監査機関を置かないこともできます。
  2. 非公開大会社では、①監査役(又は監査役会)と会計監査人、②監査委員会(委員会設置会社)と会計監査人の類型が認められています。
  3. 公開非大会社では、①監査役(又は監査役会)のみ、②監査役(又は監査役会)と会計監査人、③監査委員会(委員会設置会社)と会計監査人のいずれかの類型が認められます。
  4. 公開大会社では、①監査役会(監査役は認められない。)と会計監査人、②監査委員会(委員会設置会社)と会計監査人のいずれかの類型が認められます。
  5. なお、会計参与は、どのような機関構成の下でも置くことができるものとされています。

Q. 監査役の選任・解任方法について、注意すべき点は何ですか。

監査役は、取締役と同様に、株主総会の決議によって選任、解任され、また、所定の員数を欠くことになった場合に備えて、あらかじめ補欠の監査役を選任しておくこともできます(会329条、339条)。通常、株主総会の普通決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その議決権の過半数をもって行うが、定款の定めにより定足数を軽減、排除することができるものとされています(会309条1項)。しかし、取締役選任の場合と同じく、監査役選任決議においては、定足数を議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1未満に下げることはできません(会341条)。定款で定足数の軽減規定が置かれることが多いようです。

また、監査役の解任については、特別決議が要件とされています(会309条2項7号、343条4項)。

なお、監査役の置かれている会社においては、取締役が監査役の選任に関する議案を提出するには、監査役(複数の場合はその過半数。監査役会設置会社では監査役会)の同意が必要とされており、また、監査役(会)は、取締役に対し、監査役の選任議案を株主総会に上程するよう請求することができます(会343条)。

Q. 監査役の員数及び資格について、注意すべき点は何ですか。

  1. 監査役は、定款の定めにより任意にこれを置くことができます(会326条2項)。
    ただし、①取締役会設置会社(委員会設置会社を除く。)においては、非公開の会計参与設置会社を除き、監査役を置かなければなりません(会327条2項)。また、②取締役会非設置会社であっても、会計監査人設置会社では監査役の設置が義務付けられています(同条3項)。他方、③委員会設置会社においては、監査役を置くことができません(同条4項)。
  2. 監査役の員数は、監査役会設置会社を除き、制限はありません。監査役会設置会社においては、監査役は3人以上で、そのうち半数以上は社外監査役でなければならないとされています(会335条3項)。
    定款で特定の員数を定めておくこともでき、何名以上とする、又は何名以内とする、などと定めることもできます。
  3. 監査役の資格については、取締役の資格規定(会331条1、2項)が準用されています(会335条1項)。したがって、公開会社においては、監査役が株主でなければならない旨を定款で定めることはできないが、非公開会社では可能です。また、監査役は、当該株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与若しくは執行役を兼ねることができません(同条2項)。

Q. 監査役の任期について、注意すべき点は何ですか。

  1. 監査役の任期は、原則として選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までですが(取締役の任期と異なり、この点は、定款によっても短縮することができません。)(会336条1項)、非公開会社においては、定款により、これを選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することができ(同条2項)、また、補欠として選任された監査役の任期は、定款により、任期前に退任した前任の監査役の任期の満了すべき時までと定めることができます(同条3項)。将来的に監査役変更の可能性が少ない非公開非大会社の場合などは、最初から長期の任期を定めておくことが考えられます。
  2. このほか、監査役の法定の任期満了事由として、次のような定款変更をした場合が規定されています(同条4項)。
  1. 監査役設置会社から非設置会社への移行
  2. 委員会設置会社への移行
  3. 監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款規定の廃止
  4. 非公開会社から公開会社への移行

Q. 監査役の報酬等についての、留意点は何ですか。

監査役の報酬等は、定款でその額を定めておくことができるが、定款に定めていないときは、株主総会の決議でその額を定めることになります(会387条1項)。

また、監査役が2人以上いる場合において、各監査役の報酬額について定款又は株主総会の決議で総額のみ定められたときは、当該報酬等は、株主総会の決議で定められた範囲内で、監査役の協議によって定めることになります(同条2項)。

しかし、定款で報酬額等を具体的に定めておくことは、取締役の場合と同様に稀です。

なお、取締役報酬の場合と異なり、監査役報酬については、不確定金額方式による報酬決定は認められていません(会361条1項2号、3号参照)。

Q. 監査役会について、注意すべき点は何ですか。

  1. 会社の規模を問わず、定款の定めによりこれを置くことができます(会326条2項)。ただし、大会社(非公開会社及び委員会設置会社を除く。)では、監査役会を置くことが義務付けられています(会328条1項)。
    監査役会設置会社においては、監査役は3人以上で、そのうち半数以上は社外監査役でなければなりません(会335条3項)。
  2. 監査役会は、すべての監査役で組織され、監査報告の作成、常勤監査役の選定及び解職、監査の方針、監査役会設置会社の業務及び財産の状況の調査の方法その他監査役の職務の執行に関する事項の決定をその職務とします。監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければなりません(会390条1項ないし3項)。
  3. 監査役会は、各監査役が招集権を有し(会391条)、その招集は、会日の1週間前までに各監査役に通知して行うものとされるが、定款でこれを下回る期間を定めることができ、また、監査役全員の同意があれば、招集の手続を経ることなく開催することができます(会392条1項、2項)。
    監査役会の決議は、監査役の過半数をもって行われます(会393条1項)。監査役会の議事については、議事録を作成しなければならず(同条2項)、その議事録は、監査役会の日から10年間、会社の本店に備え置く必要があります(会394条1項)。
  4. 監査役会の内部的な運営方法に関しては、これらをすべて定款で定めず、別途、監査役会で定める監査役会規則を設ける例も少なくなく、その場合には、定款にその旨を記載することになります。

会計監査人

Q. 会計監査人について、注意すべき点は何ですか。

  1. 会計監査人は、会社の規模に関係なく、定款の定めにより置くことができますが(会326条2項)、委員会設置会社では、その設置が義務付けられている(会327条5項)ほか、大会社においても、会計監査人を置くことが強制されています(会328条)。その員数は法定されていません。経営者からの独立性を確保する意味で、会計監査人は、役員と同様に株主総会の決議(普通決議)によって選任され(会329条1項)、解任される(会339条1項)ほか、解任については、監査役(会)又は監査委員会もその権限を有しています(会340条)。
  2. 会計監査人は、公認会計士又は監査法人でなければならず(会337条1項)、その欠格事由は、会社法337条3項各号に規定されています。
  3. 会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされているが(会338条1項)、当該総会で別段の決議がされないときは、総会において再任されたものとみなされます(同条2項)。なお、会計監査人が欠けた場合、遅滞なく会計監査人が選任されないときは、監査役(会)又は監査委員会は、一時会計監査人の職務を行う者を選任しなければなりません(会346条4項ないし7項)。
  4. 会計監査人は、株式会社の計算書類等を監査し、会計監査報告を作成することを主たる職務とします(会396条1項)。その意味で、会計参与の職務に類似するが、会計参与が会社の役員であるのに対し(会329条)、会計監査人は、あくまでも外部機関である点が異なります。しかし、会社法は、新たに会計監査人の責任を株主代表訴訟の対象とする(会847条)など、一方で役員に準じた取り扱いをし、他方でその社外性に照らし、会計監査人の株式会社に対する責任について、非業務執行取締役と同様、一部免除の制度を導入しています(会424条ないし427条)。
  5. 会計監査人の報酬等は、取締役(会)が決定するが、その独立性を確保するため、これを定めるについては、監査役(会)又は委員会設置会社では監査委員会の同意が必要です(会399条)。

計算に関する事項

Q. 事業年度または決算期に関する規定について、注意すべき点は何ですか。

会社の事業年度は、1年を超えることはできないが、1年を2事業年度以上に分けることは差し支えありません。会社法において、定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないとされているのみであるが(会296条1項)、1年を超える事業年度は予定していません(会計計算規則59条2項参照)。

なお、「決算期」は、事業年度の末日を意味する言葉です。

定款において、事業年度や決算期を記載することは必ずしも必要ではないが、取締役等の任期や利益配当の時期とも関連があり、定款に記載するのが通常です。

株式会社は、各事業年度にかかる計算書類及び事業報告並びに附属明細書を作成し、監査役や会計監査人の監査、取締役会の承認を受けるなどし、会計監査人設置会社が一定の要件を備える場合を除き、定時株主総会の承認を受けなければなりません(会435条ないし439条)。また、定時株主総会は、毎事業年度の終了後、一定の時期に招集しなければなりません(会296条1項)。

Q. 剰余金の配当について、どのように定められていますか。

  1. 剰余金の配当は、株主に対する利益の還元方法を多様化させて企業価値を高める観点から、回数の制限を設けずに、年に何回でもできることとされています(会453条、454条1項)。
  2. 配当の手続については、委員会非設置会社においても、①会計監査人設置会社で、②取締役の任期の末日が選任後1年以内に終了する事業年度内の最終定時株主総会終結の日の後の日を超えず、③監査役会設置会社である場合において、④剰余金の配当を取締役会の決議により行うことができる旨の定款の定めがあるときは、取締役会の決議で通常配当ができます(会459条1項ないし3項、会計計算規則155条)。
  3. 金銭以外を配当財産とする現物配当については、株主総会で定めることとされています(会454条1項、4項)。
  4. 各株主の会社に対する配当分配請求権が発生するのは、株主総会において、その議案が決議されることによってであり、事業年度末日現在の株主と株主総会開催時の株主とは異なりうることから、通常、定款に剰余金配当の基準日を設け、「剰余金の配当は、毎営業年度の末日現在の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対して行う。」との規定を置くことが一般的です。

Q. 臨時決算制度が設けられているのは何故ですか。

会社法においては、事業年度ごとに行う通常の決算制度のほかに、期中の特定の日を臨時決算日と定めて決算することを認めています(会441条)。これは、上場会社等において、四半期決算制度の導入の検討も始まっていることから、株主や債権者に対する適時な財産状況開示制度の整備が重要となったためです。

臨時決算制度を設けることによって、臨時決算日までの損益を剰余金配当等の分配可能額に含めることができ、期中いつでも剰余金配当を行うことができることとあいまって、株主に対する利益還元を柔軟に行うことができるようになりました。

Q. 中間配当について、どのような規定が置かれていますか。

取締役会設置会社においては、1事業年度の途中で1回に限り、取締役会の決議によって金銭に限って剰余金の配当をする旨を定款で定めることができるとされています(会454条5項)

Q. 配当の除斥期間について、どのような規定が置かれていますか。

株主総会又は取締役会において、通常の剰余金の配当の議案が決議されると株主の剰余金配当請求権が、また、取締役会において中間配当が決議されると中間の配当分配請求権が、それぞれ具体的権利として発生します。これらの請求権は、商行為によって生じた商事債権ではなく民事債権であると解されるので、時効期間は、10年です(民法167条1項)。しかし、株式会社の事務処理上は、10年の期間は長すぎるので、会社は、定款で、除斥期間の定めをしている場合が多いようです。この除斥期間の定めについては、実際上の必要にかんがみ、不当に短いものでない限り有効なものと解されています。

附則に関する事項

Q. 附則には、どのような規定が置かれるのですか。

定款の附則には、一時的な規定、経過措置のような規定等将来不必要となるようなもの等が記載されます。これらの規定を各章の関係条文の位置に置くと、将来その規定を削除する場合に、条文の条数の変更など煩雑になることを考慮し、附則で定めるものです。

原始定款で、附則に定められるものには、次のようなものがあります。

定款の絶対的記載事項(会27条)のうち、①設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、②発起人の氏名又は名称及び住所。

相対的記載事項としての、変態設立事項すなわち現物出資、財産引受、発起人の報酬等、設立費用等(会28条)。

そのほか、設立の際の株式発行事項(会32条)、最初の事業年度、発起人が引き受けた株式数、準拠法などが通常記載されます。また、設立時役員(会38条2項)なども記載されることがあります。

Q. 設立に際して発行する株式や出資に関する事項について、注意すべき点は何ですか。

  1. 会社法は、設立時、定款で、株式会社の「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」を定めるとしています(会27条4号)、株式会社の「設立時発行株式の総数」は、定款の任意的記載事項です。
    また、①発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数、②設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額、③成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項は、これを定めようとするときは、定款に定めないと、発起人全員の同意を得て定める必要があります(会32条)。
    設立時発行株式の総数は、公開会社の場合、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない(会37条3項)ので、発行可能株式総数につき定款に定めがあるときは、その対応関係に留意する必要があります。
  2. 会社法は、発起人や設立時募集株式の引受人が期日までに出資の履行をしなかった場合、設立時発行株式の株主となる権利を失う(会36条3項、63条3項)と定める一方、定款の絶対的記載事項として、「設立に際して出資される財産の価額又はその最低額」と規定しておりますから、相発起人が会社設立に不参加となっても、残った1人の発起人だけで会社を設立することができます。そのような場合に備えて、定款で発起人の引き受けた出資金額の合計より低い出資最低額を記載することも考えられます。
    なお、発起人は、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならないので(会25条2項)、発起人が失権し、結果的に発起人が1株も引き受けなくなった場合は、設立無効事由となると解されます。
  3. 会社法は、株式会社の設立に際して出資する財産の最低額の定めを置かなかったことから、資本金1円の会社も設立できます。しかし、現実にそのような会社は、債務超過に陥る危険性が高く避けた方が良いと思われます。

Q. 発起人の氏名、名称、住所について、注意すべき点は何ですか。

発起人の氏名又は名称(法人の場合は名称とされます。)及び住所は、定款の絶対的記載事項ですから(会27条5号)、必ず記載する必要があります。任意的記載事項である発起人の引受株式数及び払込金額は、定款に記載する場合、通常は発起人の氏名又は名称及び住所と併せて附則に記載します。

発起人の人数の制限はないので、1名でも設立することができます。

なお、登記申請の際、発起人の氏名、住所の記載が印鑑(登録)証明書の表示と少しでも食い違いがあると、それを指摘される場合があるので、注意が必要です。

Q. 変態設立事項とは、どのようなものですか。

  1. 次の(a)ないし(d)の事項は、定款に記載(又は記録。以下同じ。)しない限り、それぞれその事項の効力が認められない、いわゆる相対的記載事項であり、変態設立事項と呼ばれています(会28条)。
    (a)金銭以外の財産を出資する者の氏名(又は名称。以下同じ。)、当該財産及びその価額、並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(会28条1号。「現物出資」と呼ばれています。)
    (b)株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名(同条2号。「財産引受」と呼ばれています。)
    (c)株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名(同条3号)
    (d)株式会社の負担する設立に関する費用(同条4号、定款の認証手数料その他会社法施行規則5条で定めるもの(払込取扱機関に対する報酬等、検査役の報酬、設立登記の登録免許税等です。)を除く。)

    (a)の現物出資において対象となる財産としては、不動産、自動車・機械その他の動産、有価証券、債権、特許権その他の無体財産権、事業の全部又は一部などが考えられます。出資する者は、発起人に限ります。
    (b)の財産引受とは、発起人が会社のために会社の成立を停止条件として特定の財産を有償で譲り受けることを約する契約をいい、会社成立後、直ちに会社が事業を開始できるよう、設立中に、不動産や設備等を会社のために準備するような場合です。
    (c)の特別利益は、発起人の会社設立者としての功労に対する特別な利益であり、利益(剰余金)の配当、新株の引受け、会社施設の利用、会社製品の買受け等に関する優先権の付与などが主要な例とされます。
    (d)の設立費用には、設立事務所の賃借料、設立事務員に対する給与、印刷費、広告費、創立総会の費用、下記(3)(c)の弁護士等による証明費用などがあり、定款に記載した金額(総額)の範囲内で、発起人が成立後の会社に対して請求できます。

  2. 変態設立事項は、例えば、現物出資や財産引受の各対象財産が過大評価された場合など、発起人らによって濫用されると、一部の者を不当に利し、また、会社の基盤的財産を損ない、他の株主や会社債権者を害するおそれがあります。そこで、会社法は、これを防止するため、これらの事項については、定款に法定の記載事項を記載させた上、特別の手続を定めています。
    すなわち、①定款に変態設立事項を記載し、②この定款について公証人の認証を受け、③記載内容の当否につき、発起人の申立てに基づく裁判所選任にかかる検査役の調査を受け、④裁判所が、不当と認めたときは、これを変更する決定をし、⑤発起人は当該決定の確定後1週間以内に限り、当該決定により変更された事項についての定款の定めを廃止する定款の変更ができます(会33条1項ないし9項)。
    募集設立の場合は、募集株式と引換えにする金銭の払込期日又は期間の初日のうち最も早い日以後は、発起人による定款変更はできず(会95条)、検査役の報告等が創立総会に提出され、創立総会が不当としたときは、その決議で定款の変更ができることとされています(会96条)。
  3. 次の場合は、上記検査役の調査等が免除されています(会33条10項)。
    (a)現物出資及び財産引受の各対象財産につき定款に記載された価額の総額が500万円を超えていない場合
    上記1の(a)及び(b)に掲げる事項(会33条10項1号)
    (b)現物出資及び財産引受の各対象財産のうち、市場価格のある有価証券について定款に記載された価額が、その市場価格として会社法施行規則6条により算定される額を超えていない場合
    当該有価証券についての上記1の(a)又は(b)に掲げる事項(同項2号)
    (c)現物出資及び財産引受の各対象財産について定款に記載された価額につき、弁護士、弁護士法人、公認会計士(外国公認会計士を含む。)、監査法人、税理士、税理士法人(不動産については、当該証明に加えて更に不動産鑑定士の鑑定評価)等からその価額が相当である旨の証明を受けている場合
    上記1の(a)又は(b)に掲げる事項中、当該証明を受けた財産に係るもの(同項3号)
  4. 会社成立前から存在する継続的事業用財産を会社成立後2年以内に会社が取得する行為は、「事後設立」と呼ばれ、現物出資や財産引受に類する面があるため、その価額が会社の純資産額の5分の1を超える場合には、株主総会の特別決議事項とされています。なお、この割合は定款で下げることができます(会467条1項5号、309条2項11号)。

Q. 最初の取締役等の任期の記載は、どうなりますか。

  1. 会社法は、最初の取締役の任期の特則を設けていません。
    しかし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することができるし、逆に、委員会設置会社を除く非公開会社においては、定款で取締役の任期を選任後10年以内の最終の決算期に関する定時株主総会終結の時まで伸長することができます(会332条2項)。したがって、最初の取締役の任期を短縮したり、伸長したりすることは可能です。
  2. 一方、最初の監査役の任期については、選任後4年以内の最終の決算期に関する定時株主総会の終結の時までとする原則のみを定めています(会336条1項)。
    取締役の場合のように任期を短縮することはできないが、委員会設置会社を除く非公開会社においては、定款で監査役の任期を選任後10年以内の最終の決算期に関する定時株主総会終結の時まで伸長することができることは、取締役の場合と同様です(同条2項)。

Q. 設立時の取締役等を定款で定めることができますか。

  1. 発起設立の場合、定款で、設立時の取締役(設立時取締役)等を定めることができ、定められた者は、出資の履行が完了した時は、設立時取締役等に選任されたものとみなされます(会38条4項)。もし定款で定めないときは、発起人が、出資の履行後、引き受けた株式の議決権の過半数をもって決定することとしました(会38条、40条、41条)。
    募集設立では、創立総会において設立時取締役等を選任するとされていますが(会88条)、定款で定めることも可能と解されています。この場合に創立総会で、定款で定められたものが不相当とされたときは定款を変更することになると思われます。
  2. 会社法は、設立に際して取締役、監査役等になるべき者を設立時取締役、設立時監査役等と呼ぶこととし、会社成立後の取締役等と区別したが、これは、会社成立の前後で取締役の職務に大きな違いがあることから、それを明確にしたものです。そして、これらの設立時取締役等は、会社成立と同時に、自動的に取締役、監査役等に移行します。
  3. 設立時代表取締役は、設立に際して代表取締役となる者です(会47条1項)。