土地建物賃貸借

(目次)
 1 建物の賃貸借
  (定期借家権)
    Q  建物の賃貸借契約で、「本契約は、期間満了により終了するものとし、更新することができない。」との約定を入れたいのですが、可能ですか
    Q  定期建物賃貸借とは、どういうものですか
    Q  定期借家権の設定に当たっては、どのような点に注意したらよいのですか
    Q  契約は、口頭でもよいのですか
    Q  契約前に公証人に相談できますか
  (造作買取請求権)
    Q  造作物買取請求権放棄は有効なのですか
  (敷金)
    Q  敷金とは、どういうものですか
  (解除)
    Q  賃借人が問題を起こしたような場合に備えて、賃貸人の判断で賃貸借を解約できるようにしておく必要があると思いますが、その旨の契約条項を設けるには、どんな点に注意したらよいのですか
  (賃借権の相続)
    Q  賃借人が死亡した場合には、賃借人の地位は相続人によって相続されますか
    Q  建物の賃借人が死亡し相続人がいない場合、賃借人と同居していた内縁の配偶者や事実上の養親子の地位はどうなるのですか
    Q  友人に一戸建ての家を賃貸していましたが、友人が死亡し、その長男が相続しました。ところが、長男はその家に居住しておらず、友人の内縁の妻が友人と同居していたのです。この場合、内縁の妻はどうなるのですか
 2 土地の賃貸借
  (一時使用の賃貸借)
    Q  資材置場として土地を賃貸していたところ、建物を建てたいといわれて承諾することにしました。権利関係をはっきりさせるためにはどうしたらよいでしょうか
  (強行規定)
    Q  通常の建物の所有を目的とすることを承諾するのだとすれば、どうですか
    Q  では、公正証書を作成するとき、以上の点は公証人にチェックしてもらえるのでしょうか
  (定期借地権)
    Q  定期借地権であれば、期間満了のときに必ず土地を返してもらえると聞きましたが、定期借地権とは、どのようなものですか
    Q  その契約には、どんな要件が必要ですか
  (事業用定期借地権)
    Q  存続期間がもっと短くて、期間満了後、確実に土地が更地で戻ってくるという制度はないのですか
    Q  事業用定期借地権とは、どのようなものですか
    Q  どのような建物が該当するのですか
    Q  老人ホームを建てるために事業用定期借地権を設定することはできますか
    Q  事業用定期借地権は、どのようにして契約しますか


1 建物の賃貸借


(定期借家権)

 建物の賃貸借契約で、「本契約は、期間満了により終了するものとし、更新することができない。」との約定を入れたいのですが、可能ですか。

 建物の賃貸借契約については、借地借家法(以下「法」といいます。)が適用になります。同法によると、39条の取壊し予定の建物の賃貸借や、40条の一時使用目的の建物の賃貸借では、そのような約定を入れることになります。それ以外の、一般的な建物の賃貸借であっても、法38条に規定する定期建物賃貸借契約を結べば、そのようにできます。

 定期建物賃貸借とは、どういうものですか。

 これは、当事者の自由な合意によって選んだ契約期間(例えば6か月、1年、3年等)を経過すれば必ず賃借権が終了するとする、いわゆる定期借家権を設定する契約です。

 定期借家権の設定に当たっては、どのような点に注意したらよいのですか。

 建物の賃貸人は、あらかじめ、賃借人に対し、「当該建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により契約が終了すること」につき、その旨を記載した書面を交付して説明することが必要です(法38条2項)。この説明がないときは、更新排除特約は無効となります(同条3項)。

 契約は、口頭でもよいのですか。

 この契約は、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、更新排除特約の効力が認められます(法38条1項前段)。公正証書等の書面が作成されていませんと、通常の普通借家契約として、賃貸人の更新拒絶・解約申入れに正当の事由がない限り契約は終了しないことになります(法28条)。
 したがって、公正証書によることをお勧めします。

 契約前に公証人に相談できますか。

 契約条項の定め方なども含めて相談にのっています。あらかじめ最寄りの公証役場に連絡し相談してみてください。
 なお、公証事務にかかわる相談は無料です。


(造作買取請求権)

 造作物買取請求権放棄は有効なのですか。

 造作買取請求権に関する規定(法33条)は強行規定でないので、造作買取請求権放棄の特約は有効です。
 なお、強行規定とは、公の秩序に関する法理で、個人の意見によって左右することができないものです。法律行為の内容が強行規定に違反するときは、その法律行為は無効です。


(敷金)

 敷金とは、どういうものですか。

 賃借人が賃料の支払その他賃貸借契約上の債務を担保する目的で、敷金契約に基づき賃貸人に交付する金銭です。賃借人は、契約終了後、建物明け渡し完了のときまでに発生した賃貸人に対する債務を控除し、残額があれば、その残額について敷金返還請求権を取得します。なお、特約がなければ、建物明け渡しが先給付になりますので、賃借人としては、不安でしたら、建物明け渡しと敷金返還を同時に行う旨の特約をしておけばよいでしょう。


(解除)

 賃借人が問題を起こしたような場合に備えて、賃貸人の判断で賃貸借を解約できるようにしておく必要があると思いますが、その旨の契約条項を設けるには、どんな点に注意したらよいのですか

 契約当事者の一方の意思表示によって、契約の効力を遡及的に消滅させ、契約が初めから存在しなかったと同じような法律効果を生じさせることを「解除」といいます。
 建物の賃貸借の場合、ささいなことを解除事由に定めても、無効となります。信頼関係の基本となる事由を定めるべきです。賃料不払い、使用目的の無断変更、賃借権の無断譲渡・転貸等が代表的な解除事由です。その他の解除事由も当然認められますが、信頼関係を破壊するかどうかの判断は、微妙な点もあるので、公正証書を作成するに当たっては、公証人に実情を話して相談してみるのがよいでしょう。


(賃借権の相続)

 建物の賃借人が死亡した場合には、賃借人の地位は相続人によって相続されますか。

 相続されるというのが判例です。

 建物の賃借人が死亡し相続人がいない場合、賃借人と同居していた内縁の配偶者や事実上の養親子の地位はどうなるのですか。

 内縁の配偶者や事実上の養親子は、賃借人の権利義務を承継することができます。法36条にその旨の規定があります。

 友人に一戸建ての家を賃貸していましたが、友人が死亡し、その長男が相続しました。ところが、長男はその家に居住しておらず、友人の内縁の妻が友人と同居していたのです。この場合、内縁の妻はどうなるのですか。

 判例によると、内縁の妻は、長男の相続した賃借権を援用して自己の居住する権利を主張し、家主に対抗することができます。しかし、長男との間で権利関係を調整する必要があります。


2 土地の賃貸借


(一時使用の賃貸借)

 資材置場として土地を賃貸していたところ、建物を建てたいといわれて承諾することにしました。権利関係をはっきりさせるためにはどうしたらよいでしょうか。

 建物を建てることを承諾することにしたという趣旨が、資材置場としての土地の利用目的を継続するためであって、建物も臨時設備の建物に限る趣旨であるとすれば、法25条の一時使用の賃貸借であることを明確にしておくことが不可欠です。具体的には、賃貸借期間を短期期間とし、臨時設備等の建物であることを明確にしておくことが必要です。


(強行規定)

 通常の建物の所有を目的とすることを承諾するのだとすれば、どうですか。

 通常の建物の所有目的ですと、借地借家法上の強行規定である賃貸借の存続期間(法3条、4条)、契約の更新(法5条、6条)、目的建物の滅失・取壊し・再築(法7条、8条、18条)、賃借権の対抗力(法10条)、目的建物の買取請求権(法13条、14条)、賃借権の譲渡・転貸につき承諾に代わる裁判所の許可(法19条)の規定が適用されます。

 では、公正証書を作成するとき、以上の点は公証人にチェックしてもらえるのでしょうか。

 公証人は、不明確な条項や無効な約定を含む公正証書を作成するわけにいきませんので、当然入念にチェックします。そのためにも、契約締結前に公証人と相談することをお勧めします。


(定期借地権)

 定期借地権であれば、期間満了のときに必ず土地を返してもらえると聞きましたが、定期借地権とは、どのようなものですか。

 存続期間50年以上の借地権(借地借家法上、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権を借地権といいます。法2条1号)については
@ 期間が満了したときに契約の更新がないこと
A 建物の再築による存続期間の延長がないこと
B 建物の買取請求をしないこと
の特約をすることができます(法22条)。この定期借地権では、期間が満了すれば契約は終了し、土地は更地で戻ってきます。

 その契約には、どんな要件が必要ですか。

 次の2点が必要です。
@ 存続期間が50年以上であること
A 前述した特約は公正証書による等書面によってすること(法律上は、この特約を公正証書による等書面によってすることとされていますが、契約全体を書面とするのが普通です。)
したがって、公正証書によることをお勧めします。


(事業用定期借地権)

 存続期間がもっと短くて、期間満了後、確実に土地が更地で戻ってくるという制度はないのですか。

 事業用定期借地権があります(法23条1項、2項)。
 法23条、24条などが改正されて、平成20年1月1日から認められるようになった更新等のない借地権です。改正前にも旧24条1項で更新等のない「事業用借地権」が認められていましたが、存続期間が10年から20年までのものに限られていました。新しい23条の「事業用定期借地権」により、存続期間が10年から50年未満まで許されることになりました。

 どのようなものですか。

 専ら事業用の建物を所有するための借地権に限られます(したがって、居住用の目的であってはなりません。)。存続期間の長さに応じて、次のどちらかの類型により、更新等のない借地権を設定することができます。
@ 存続期間が30年以上50年未満の借地権を設定する場合には、貸主と借主が、契約の更新及び建物の再築による存続期間の延長がなく、建物買取請求をしないことを約束すると、この約束は有効で、更新などのない借地権になります。
A 存続期間が10年以上30年未満の借地権を設定する場合には、法定更新、建物の再築による存続期間の 延長及び建物の買取請求権に関する法の規定は、適用されません。

 どのような建物が該当するのですか。

 量販店、レストラン、遊技場、旅館、ホテルなどのほか、公益的な協会、学校などのための建物を含みます。しかし、賃貸マンションや社宅は、賃貸人にとって事業目的に入りますが、居住の用に供する建物ですから専ら事業の用に供する建物とはいえないので、該当しません。

 老人ホームを建てるために事業用定期借地権を設定することはできますか。

 一口に老人ホームといっても、その運営・利用形態は様々です。具体的な事案に即して、特定人が継続して専用使用する建物かどうか等につき検討する必要があります。

 事業用定期借地権は、どのようにして契約しますか。

 公正証書によってしなければなりません(法23条3項)。

 なぜですか。

 これは、法律専門家である公証人に要件を慎重に審査させ、脱法的乱用が生じないように特に配慮したものです。



トップページへ戻る