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公証事務

1
遺言

1 遺言の意義及び種類

Q1.そもそも、何のために遺言をするのですか。

  1.    遺言の意義
       遺言とは、自分が生涯をかけて築き、かつ、守ってきた大切な財産を、最も有効・有意義に活用してもらうために行う遺言者の意思表示です(なお、遺言には、非嫡出子を認知するなどの身分上の事項に関する遺言もありますが、このQ&Aでは、財産上の事項に関する遺言について説明することにします。)。
  2.    遺言による相続争いの防止
       世の中では、遺言がないために、相続をめぐり、親族間で争いの起こることが少なくありません。しかし、今まで仲の良かった者が、相続をめぐって骨肉の争いを起こすことほど、悲しいことはありません。
       遺言は、上記のような悲劇を防止するため、遺言者自らが、自分の残した財産の帰属を決め、相続をめぐる争いを防止しようとすることに主たる目的があります。

Q2.遺言がないときは、どうなりますか。

  1.    法定相続
       遺言がないときは、民法が相続人の相続分を定めているので、これに従って遺産を分けることになります(これを「法定相続」といいます。)。
  2.    遺言がないときは遺産分割協議が必要
       ところで、民法は、例えば、「子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする」というように、抽象的に相続分の割合を定めているだけなので(民法900条)、遺産の帰属を具体的に決めるためには、相続人全員で遺産分割の協議をする必要があります。
       しかし、誰でも、少しでも多く、少しでも良いものを取りたいというのが人情なので、協議をまとめるのは、必ずしも容易なことではありません。協議がまとまらない場合には、家庭裁判所で、調停又は審判で解決してもらうことになりますが、これも、争いが深刻化して、解決が困難になる事例が後を絶ちません。
       それに対し、遺言で、例えば、妻には自宅と○万円、長男にはマンションと□万円、二男には別の土地と◇万円、長女には貴金属類と△万円といったように具体的に決めておけば、争いを未然に防ぐことができるわけです。
  3.    遺言による公平な遺産相続の実現
       また、法定相続に関する規定は、一般的な家族関係を想定して設けられているので、これをそれぞれの具体的な家族関係に当てはめると、相続人間の実質的な公平が図れないという場合も少なくありません。
       例えば、法定相続では、子は、皆等しく平等の相続分を有していますが、子供の頃から遺言者と一緒になって家業を助け、苦労や困難を共にして頑張ってきた子と、そうではなく余り家に寄り付かない子とでは、それなりの差を設けないと、かえって不公平ということもできます。
       すなわち、遺言者が、自分の家族関係をよく頭に入れて、その家族状況に合った相続の仕方を遺言できちんと決めておくことは、後に残された者にとって、とても有り難いことであり、必要なことなのです。

Q3.遺言の必要性が特に高い場合とは、どのような場合ですか。

   一般的に言えば、ほとんどの場合において、遺言者が、御自分の家族関係や状況をよく頭に入れて、それにふさわしい形で財産を承継させるように遺言をしておくことが、遺産争いを予防するため、また、後に残された者が困らないために、必要なことであると思います。
   しかし、次の1から7までのような場合には、遺言をしておく必要性がとりわけ高いと認められるといえましょう。

  1.    夫婦の間に子供がいない場合
       子供のいない夫婦のうち御主人が死亡した場合で、その両親が既に亡くなっているときは、法定相続となると、夫の財産は、妻が4分の3、夫の兄弟が4分の1の各割合で分けることになります。
       しかし、長年連れ添った妻に全財産を相続させたいと思う方も多いでしょう。そうするためには、遺言をしておくことが必要なのです。兄弟には、遺留分がないので、遺言さえしておけば、全財産を愛する妻に残すことができます。
  2.    再婚をし、先妻の子と後妻がいる場合
       先妻の子と後妻との間では、感情的に対立することが多いので、遺産争いが起こる確率が高いといえるでしょう。争いの発生を防ぐため、遺言できちんと定めておく必要性が特に強いといえましょう。
  3.    長男の嫁に財産を分けてやりたい場合
       長男の死亡後、その妻が亡夫の親の世話をしているような場合には、その嫁にも財産を残してあげたいと思うことが多いと思いますが、嫁は、相続人ではありません。民法の改正によって特別の寄与の制度が認められるようになりましたが、その制度に基づく場合には、お嫁さんが、相続人に対し、寄与に応じた額の金銭の支払を請求し、当事者間に協議が調わないときなどには、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求する手続をしなければなりません(民法1050条)。そのような迂遠な手続をしなくても、お嫁さんに遺贈する旨の遺言をすることによって、財産を分けることができます。
  4.    内縁の妻の場合
       長年、夫婦として連れ添ってきても、婚姻届を出していない場合には、いわゆる内縁の夫婦となり、内縁の妻に相続権がありません。したがって、内縁の妻に財産を残してあげたい場合には、必ず遺言をしておかなければなりません。
  5.    家業等を継続させたい場合
       個人で事業を経営したり、農業を営んでいたりする場合などは、その事業等の財産的基礎を複数の相続人に分割してしまうと、上記事業等の継続が困難となりましょう。このような事態を招くことを避け、家業等を特定の者に承継させたい場合には、きちんとその旨の遺言をしておかなければなりません。
  6.    家族関係に応じた適切な財産承継をさせたい場合
       上記の各場合のほか、①特定の財産を特定の相続人に承継させたいとき(例えば、不動産を相続人の共有にしますと、将来、処分する際に、共有者の協議を要することになります。)、②身体に障害のある子に多く相続させたいとき、③老後の面倒を見てくれた子に多く相続させたいとき、④可愛いくてたまらない孫に財産を残したいときなどのように、遺言者のそれぞれの家族関係の状況に応じて、財産承継をさせたい場合には、遺言をしておく必要があります。
  7.    相続人が全くいない場合
       相続人がいない場合には、特別な事情がない限り、遺産は、国庫に帰属します。したがって、このような場合に、①特別世話になった人にお礼として財産を譲りたいとき、②お寺や教会、社会福祉関係の団体、自然保護団体、又は御自分が有意義と感じる各種の研究機関等に寄付したいときなどは、その旨の遺言をしておく必要があります。

Q4.遺言には、どのような種類がありますか。

  1.    遺言の種類
       遺言には、①公正証書遺言、②自筆証書遺言、③秘密証書遺言の3種類があります。その3種類については、「3 公正証書遺言の作成」以下で詳しく御説明します。
  2.    厳格な方式の定め
       遺言は、遺言者の真意を確実に実現させる必要があるため、3種類の遺言のいずれについても、法律によって厳格な方式が定められています。その方式に従わない遺言は、全て無効です。「あの人は、生前にこう言っていた」などと言っても、また、録音テープやビデオで録音や撮影をしておいても、それらは、遺言として、法律上の効力がありません。

2 遺言の時期、撤回及び変更

Q1.遺言は、いつするべきものでしょうか。

  1.    万一に備えて家族のために
       遺言は、死期が近づいてからするものと思っている人がいますが、それは全くの誤解です。人間は、いつ何時、何があるかも分かりません。いつ何があっても、残された家族が困らないように配慮して遺言を作成するものなのです。
       つまり、遺言は、自分が元気なうちに、愛する家族のために、自分に万一のことがあっても、残された者が困らないように作成しておくべきものなのです。ちなみに、最近では、かなり若い人でも、海外旅行に行く前等に遺言書を作成する例も増えています。遺言は、後に残される家族に対する最大の思いやりなのです。
  2.    判断能力がある元気なうちに
       遺言は、判断能力があるうちは、死期が近くなってもできますが、判断能力がなくなってしまえば、もう遺言はできません。遺言をしないうちに、判断能力がなくなったり、死んでしまっては、後の祭りで、そのために、家族の悲しみが倍加する場合もあることでしょう。遺言は、元気なうちに、備えとして、これをしておくべきものなのです。ちなみに、遺言は、満15歳以上になれば、いつでもできます。

Q2.遺言は、取消し(撤回)や変更が自由にできますか。

  1.    撤回や変更も可能
       遺言は、人の最終意思を保護しようという制度ですので、取消し(法律上は、遺言の取消しのことを「撤回」といいます。)や変更は、いつでも、また、何回でもできます。遺言は、作成した時は、それが最善と思って作成した場合でも、その後の家族関係を取り巻く諸状況の変化に応じ、あるいは心境が変わったり、考えが変わったりして、撤回したり、変更したりしたいと思うようになることもあると思います。さらに、財産の内容が大きく変わったときも、多くの場合、書き直した方がよいといえるでしょう。
  2.    撤回や変更のための新たな遺言
       以上のように、遺言は、遺言作成後の諸状況の変化に応じて、いつでも、自由に、撤回や変更をすることができます。ただ、遺言の撤回や変更も、新たな遺言(その種類は問いません。)を作成することによって行うことになるので、新たに作成する種類の遺言の方式に従って、適式にされなければなりません。

3 公正証書遺言の作成

Q1.公正証書遺言は、どのようなものですか。

  1.    公正証書遺言の作成
       公正証書遺言は、遺言者本人が、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を口頭で告げ、公証人が、それが遺言者の真意であることを確認した上、これを文章にまとめたものを、遺言者及び証人2名に読み聞かせ、又は閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらって、遺言公正証書として作成します。
       なお、民法では、「証人二人以上」と定められていますが、公証実務では、証人が3名以上になることはなく、証人2名で公正証書遺言が作成されます。
       遺言者が遺言をする際には、どのような内容の遺言にしようかと思い悩むことも少なくないと思いますが、そのようなときも、公証人が、親身になって相談を受け、必要な助言をし、遺言者にとって、その意向に沿った最善と思われる遺言書を作成していくことになります。
  2.    公正証書遺言の費用
       費用がどの程度必要かについて御心配かもしれませんが、費用は、政令で定められており、相談は、全て無料となっています。詳しくは、Q7を御覧ください。

Q2.公正証書遺言には、どのようなメリットがありますか。

   公正証書遺言には、次のように、多くのメリットがあります。

  1.    安全確実な遺言方法
       公証人は、多年、裁判官、検察官又は弁護士の経験を有する法曹資格者や、多年、法律事務に携わり、法曹資格者に準ずる学識経験を有する者であって、いずれも正確な法律知識と豊富な実務経験を有しています。したがって、複雑な内容であっても、法律的に見てきちんと整理した内容の遺言書を作成しますし、もとより、方式の不備で遺言が無効になるおそれもありません。公正証書遺言は、自筆証書遺言と比べて、安全確実な遺言方法であるといえます。
  2.    遺言者の自書が不要
       自筆証書遺言は、財産目録以外は全文を自書しなければならないので、体力が弱り、あるいは病気等のために、自書が困難となった場合には、自筆証書遺言をすることはできません。他方、このような場合でも、公証人に依頼すれば、遺言をすることができます。
       また、公正証書遺言では、遺言者が署名できなくなった場合でも、公証人が、遺言公正証書に、その旨を記載するとともに、「病気のため」などとその理由を付記し、職印を押捺することによって、遺言者の署名に代えることができることが法律で認められています。公証実務では、これに加えて、公証人が遺言者の氏名を代署し、その代署した氏名の次に、遺言者に押印してもらうことが行われており、遺言者が押印することもできないときは、遺言者の意思に従って、公証人等が遺言者の面前で遺言者に代わって押印することができます。
  3.    公証人の出張が可能
       遺言者が高齢で体力が弱り、あるいは病気等のために、公証役場に出向くことが困難な場合には、公証人が、遺言者の御自宅、老人ホーム、介護施設、病院等に出張して、遺言公正証書を作成することもできます。
  4.    遺言書の検認手続が不要
       公正証書遺言は、家庭裁判所で検認の手続を経る必要がないので、相続開始後、速やかに遺言の内容を実現することができます。
  5.    遺言書原本の役場保管
       公正証書遺言は、原本が必ず公証役場に保管されるので、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりする心配も全くありません。
  6.    遺言書原本の二重保存システムの存在
       日本公証人連合会では、震災等により、遺言公正証書の原本、正本及び謄本が全て滅失しても、その復元ができるようにするため、平成26年以降に作成された全国の遺言公正証書の原本を電子データにして、二重に保存するシステムを構築しているので、保管の点からも安心です。
  7.    遺言登録・検索システムの存在
       平成元年以降に作成された公正証書遺言については、日本公証人連合会において、遺言登録・検索システムを構築し、全国的に、公正証書遺言を作成した公証役場名、公証人名、遺言者名、作成年月日等をそのシステム上で管理しているので、全国の公証役場から、日本公証人連合会を通じて、公正証書遺言の有無に関する検索をすることも可能です。ただし、秘密保持のために、検索をすることができるのは、相続人等の利害関係人に限られます。

Q3.公正証書遺言をするには、どのような資料を準備しておけばよいでしょうか。

   公正証書遺言の作成には、次の資料が必要です。公証人に依頼する場合には、これらを準備していただくと、打合せがスムーズに進行します。
   なお、事案に応じ、他にも資料が必要となる場合もありますが、詳細は、最寄りの公証役場に御遠慮なくお尋ねください。

  1.    遺言者本人の3か月以内に発行された印鑑登録証明書(公正証書遺言の性質に鑑み、公証実務では、遺言者の本人確認資料として、基本的に印鑑登録証明書を使用しています。なお、印鑑登録証明書に加えて、運転免許証、旅券、個人番号カード(マイナンバーカード)、住民基本台帳カード等の官公署発行の顔写真付き身分証明書も併せて遺言者の本人確認資料にすることもあります。)。
  2.    遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本
  3.    財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票(法人の場合には、その法人の登記事項証明書(登記簿謄本))
  4.    財産の中に不動産がある場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
  5.    なお、Q1で説明したように、公正証書遺言をする場合には、証人2名が必要ですが、遺言者の方で証人を用意される場合には、証人予定者の氏名、住所、生年月日及び職業をメモしたものを御用意ください。

Q4.公正証書遺言は、どのような手順で作成するのですか。

公正証書遺言は、通常、次のような手順で作成されることが少なくありません。

  1.    公証人への相談及び依頼
       公正証書遺言は、士業者や銀行を通じるなどして、公証人に相談や依頼をすることもできますが、必ずしも士業者や銀行を介する必要はなく、遺言者やその親族等が、公証役場に電話やメールをしたり、予約を取って公証役場を訪れたりするなどして、公証人に直接相談や依頼をしても一向に差し支えありませんし、実際にも、そのような場合が少なくありません。
  2.    相続内容のメモ及び必要資料の提出
       メール送信、ファックス送信、郵送等により、又は持参して、相続内容のメモ(遺言者がどのような財産を有していて、それを誰にどのような割合で相続させ、又は遺贈したいと考えているのかなどを記載したメモ)を公証人に御提出ください。
       また、それとともに、メール送信(PDF等)、ファックス送信、郵送等により、又は持参して、Q3で記載した必要資料を公証人に御提出ください。
  3.    遺言者公正証書の案の作成と修正
       公証人は、前記2で提出されたメモ及び必要資料に基づき、遺言公正証書の案を作成し、メール等により、それを当事者に提示します。
       遺言者が、それを御覧になって、修正してほしい箇所を御指摘いただければ、公証人は、それに従って、遺言公正証書の案を修正します。
  4.    遺言公正証書の作成日時の打合せと確定
       遺言公正証書の案が確定した場合には、公証人は、遺言者が公証役場にお越しいただき、又は公証人が出張して、遺言公正証書を作成する日時について、当事者との間で打合せを行った上、確定します(事案によっては、遺言公正証書の作成日時が、最初に予定されることもあります。)。
       また、遺言公正証書の案が確定することによって、手数料の金額も確定するので、公証人は、当事者に対し、手数料の金額についても、事前にお知らせします。
  5.    遺言公正証書の作成当日
       作成当日には、遺言者本人から、公証人と証人2名の前で、遺言の内容を改めて口頭で告げていただき、公証人は、それが判断能力を有する遺言者の真意であることを確認した上、前記4の確定した遺言公正証書の案に基づきあらかじめ準備した遺言公正証書の原本を、遺言者及び証人2名に読み聞かせ、又は閲覧させて、内容に間違いがないことを確認してもらいます(内容に誤りがあれば、その場で修正することもあります。)。
       内容に間違いがない場合には、遺言者及び証人2名が、遺言公正証書の原本に署名し、押印をすることになります(遺言者が署名することができない場合については、Q2の2参照)。
       そして、公証人も、遺言公正証書の原本に署名し、職印を押捺することによって、遺言公正証書は、完成します。
       作成当日に以上の手続を行うに当たっては、遺言者が自らの真意を任意に述べることができるように、利害関係人には、席を外していただく運用が行われています。もっとも、御夫婦が同時に遺言公正証書を作成する場合には、御夫婦の間で互いにその内容について十分な話合いを行われていることなどから、御夫婦に御異存がないときは、例外的に、御夫婦が同席したまま、御夫婦の遺言公正証書を作成することもあります。

Q5.公正証書遺言の証人は、どのように準備するのですか。

  1.    遺言者側が準備可能
       公正証書遺言をするためには、遺言者の真意を確認し、手続が適式に行われたことを担保するため、証人2名の立会いが義務づけられていますが、証人2名は、いずれも遺言者の方で準備することができます。もっとも、①未成年者、②推定相続人、③遺贈を受ける者、④推定相続人及び遺贈を受ける者の配偶者及び直系血族等は、証人になることができないので、御留意ください。
  2.    公証役場でも紹介可能
       なお、適当な証人が見当たらない場合には、公証役場で紹介してもらうことができるので、御遠慮なくおっしゃってください。

Q6.公正証書遺言の秘密保持について、説明してください。

   公正証書遺言は、次のように、確実に秘密を守ることができる遺言です。
   なお、遺言公正証書に関する種々のホームページ、保険会社のリーフレット、遺言に関する雑誌の特集や文献等には、公証人や証人が関与する遺言公正証書には秘密が保てない欠点があるとする記載も見受けられますが、これらの記載内容は、誤解に基づくものであって、制度の趣旨を正しく理解したものとはいえません。
   遺言を検討されている方は、安心して、公証人に御相談ください。

  1.    公証人等の守秘義務
       公証人は、公務員であり、法律上の守秘義務が課されており、公証人を補助する書記も、職務上知り得た秘密を他に漏らさないことを宣誓して採用されているので、秘密が漏れる心配はありません。
       また、証人は、遺言者の依頼を承諾してその場に立ち会うので、遺言者が遺言書を作成したことや遺言の内容について、遺言者から、証人に対し、他に漏らさないようにとの明示の意思表示があったときはもとより、たとえ明示の意思表示がなくても、遺言の趣旨に照らし、当然、他に漏らさないようにとの黙示の意思表示とその承諾があったということができるので、証人が遺言者に対して民法上の秘密保持義務を負うことは明らかといえます。これは、公証役場が紹介した証人についても、証人として、遺言者の依頼を承諾してその場に立ち会うことになる点では変わりがないので、同様に秘密保持義務を負うということができます。
       以上のとおり、公証人の側や証人から、遺言公正証書を作成したことや遺言の内容が漏れる心配はありません。
  2.    遺言書原本の厳重な保管
       さらに、遺言公正証書の原本は、公証役場に厳重に保管され、遺言者の死亡まで他人の目に触れることは絶対にありません。実際にも、遺言公正証書に関する情報漏れにより問題が起きたことも聞きません。

Q7.公正証書遺言を作成する場合の手数料は、どれくらい掛かるのですか。

   公正証書遺言の作成費用は、公証人手数料令という政令で法定されています。ここに、その概要を説明しますと、次のとおりです。ただし、相談は、全て無料です。

  1.    手数料算出の基準
       まず、遺言の目的である財産の価額に対応する形で、次のとおり、その手数料が定められています。

    (公証人手数料令第9条別表)

    目的の価額 手数料
    100万円以下 5000円
    100万円を超え200万円以下 7000円
    200万円を超え500万円以下 11000円
    500万円を超え1000万円以下 17000円
    1000万円を超え3000万円以下 23000円
    3000万円を超え5000万円以下 29000円
    5000万円を超え1億円以下 43000円
    1億円を超え3億円以下 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
    3億円を超え10億円以下 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
    10億円を超える場合 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額
  2.    具体的な手数料算出の留意点
       上記の基準を前提に、具体的に手数料を算出するには、次の点に留意が必要です。
    1.    財産の相続又は遺贈を受ける人ごとにその財産の価額を算出し、これを上記基準表に当てはめて、その価額に対応する手数料額を求め、これらの手数料額を合算して、当該遺言公正証書全体の手数料を算出します。
    2.    全体の財産が1億円以下のときは、上記(1)によって算出された手数料額に、1万1000円が加算されます。これを「遺言加算」といいます。
    3.    さらに、遺言公正証書は、通常、原本、正本及び謄本を各1部作成し、原本は、法律に基づき公証役場で保管し、正本及び謄本は、遺言者に交付するので、その手数料が必要になります。
         すなわち、原本については、その枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書きの公正証書にあっては、3枚)を超えるときは、超える1枚ごとに250円の手数料が加算されます。また、正本及び謄本の交付については、1枚につき250円の割合の手数料が必要となります。
    4.    遺言者が、病気又は高齢等のために体力が弱り、公証役場に赴くことができず、公証人が、病院、御自宅、老人ホーム、介護施設等に赴いて、遺言公正証書を作成する場合には、上記(1)の手数料が50%加算されることがあるほか、公証人の日当と、現地までの交通費が掛かります。
    5.    公正証書遺言の作成費用の概要は、以上でほぼ御説明できたと思いますが、具体的に手数料の算定をする際には、上記以外の点が問題となる場合もあります。しかし、余り細かくなるので、それらについては、それが問題となる場合に、それぞれの公証役場で、御遠慮なくお尋ねください。

Q8.口がきけない方や、耳が聞こえない方でも、公正証書遺言をすることができますか。

   公正証書遺言をすることは、可能です。
   従前は、公正証書遺言は、遺言者が、「口頭で」、公証人にその意思を伝えなければならず、さらに、遺言公正証書の作成後、これを「読み聞かせ」なければならないとされていました。しかし、民法の改正により、平成12年1月から、次のように、口がきけない方や、耳の聞こえない方でも、公正証書遺言をすることができるようになりました。

  1.    口頭に代わる措置
       口のきけない方でも、自書のできる方であれば、公証人の面前でその趣旨を自書(筆談)することにより、また、病気等で手が不自由で自書のできない方は、通訳人の通訳を通じて申述することにより、公証人にその意思を伝えれば、公正証書遺言ができることになりました。
       この結果、もともと口のきけない方も、あるいは脳梗塞で倒れて口がきけなくなったり、病気のために気管に穴を開けたりして、口のきけない状態になっている方でも、公正証書遺言ができるようになりました。
       そして、実際にも、公証人が、病院等に赴いて、口のきけない方の遺言公正証書を作成することも珍しくありません。
  2.    読み聞かせに代わる措置
       また、公正証書遺言は、作成後、公証人が、遺言者及び証人の前で読み聞かせることにより、その正確性を確認することになっていますが、耳の聞こえない方のために、読み聞かせに代えて、通訳人の通訳又は閲覧により、筆記した内容の正確性を確認することができるようになりました。

Q9.亡くなった方について、公正証書遺言が作成されているかどうかを調べることができますか。

  1.    公正証書遺言の検索システム
       平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば、日本公証人連合会において、遺言登録・検索システムを構築し、全国的に、公正証書遺言を作成した公証役場名、公証人名、遺言者名、作成年月日等をそのシステム上で管理しているので、全国の公証役場から、日本公証人連合会を通じて、公正証書遺言の有無について、すぐに調べることができます。
  2.    検索の方法
       秘密保持のため、相続人等の利害関係人のみが、公証役場の公証人を通じて照会を依頼することができることになっています。したがって、亡くなった方が死亡したという事実の記載があり、かつ、亡くなった方との利害関係を証明できる記載のある戸籍謄本と、御自身の身分を証明するもの(運転免許証等のように、官公署発行の顔写真付き身分証明書)を持参し、お近くの公証役場に御相談ください。

Q10.公正証書遺言は、どのくらいの期間、保管されるのですか。

  1.    公正証書の保存期間に関する定め
       公正証書の保存期間は、公証人法施行規則により、20年となっています。さらに、上記規則は、特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間は保存しなければならないと定めています。
  2.    遺言公正証書の保存期間の運用
       遺言公正証書は、上記規則の「特別の事由」に該当すると解釈されています。現在のところ、遺言公正証書については、いわば半永久的に保存している公証役場や、遺言者の生後120年間保存している公証役場等があります。

4 遺言の内容

Q1.障害を抱えた子の将来の面倒を見ることを条件に、第三者に財産を与えるという遺言はできますか。

  1.    負担付遺贈
       年老いた親にとって、障害を抱えた子の将来ほど、心配なことはないでしょう。したがって、もし誰かその子の面倒を見てくれるという信頼できる人や機関が見付かれば、その子の面倒を見てもらう代わりに、その人や機関に、それにふさわしい財産を遺贈したいと思われるのも、ごく自然なことと思います。民法は、このように、財産の遺贈を受ける人(「受遺者」といいます。)に、一定の法律上の義務を負担させる「負担付遺贈」の規定を置いています(民法1002条)。
  2.    遺言信託
       また、負担付遺贈とは別に、遺言によって、信頼できる人や機関に、財産を譲渡するなどし、障害を持つ子のために、その財産を管理又は処分し、必要なことを行ってもらう「遺言信託」という制度もあります(信託法3条2号)。
  3.    公証人に御相談を
       いずれにせよ、このような遺言をする場合には、事前に、受遺者となるべき人又は機関と十分に話し合っておくことが必要と思われます。
       どのような方法が適しているかは、ケースによって異なるので、公証人に御相談ください。

Q2.予備的な遺言について、説明してください。

  1.    予備的な遺言の事例
       例えば、遺言者が長男と二男(いずれも結婚して子供がいます。)に財産を相続させる遺言をした場合に、万が一、長男が遺言者よりも先に死亡したときは、遺言者としては、長男に相続させようとした財産は、孫である長男の子供に相続させたいと考えることが少なくないように思います。
       しかし、そのことを遺言に記載しておかないと、長男が遺言者よりも先に死亡したときは、遺言のうち、長男に相続させることにした部分が失効するので、長男に相続させようとした財産は、当然には長男の子供に相続させることにはならず、相続人間で改めて遺産分割協議をしなければ、その帰属が決まらないことになります。
       そこで、そのようなことがないように、遺言において、①「遺言者は、その有する△△の財産を、長男に相続させる」という条項(主位的な遺言)とともに、②「遺言者は、長男が遺言者に先立って、又は遺言者と同時に死亡したときは、長男に相続させるとした財産を、長男の子供に相続させる」という条項(予備的な遺言)を記載しておけば、長男が遺言者よりも先に死亡したときに、長男に相続させようとした財産は、長男の子供に相続させることができることになります。
       なお、長男が遺言者と同時に死亡したときも、法的には、長男が遺言者よりも先に死亡したときと同じことになるので、上記②のような記載をします(上記②については、「遺言者は、長男が遺言者の死亡以前に死亡したときは」などと記載することもあります。)。
       このように、遺言者が、万が一に備えて、財産を相続させ、又は遺贈する者をあらかじめ予備的に定めておく遺言を「予備的な遺言」といいます。例えば、遺言者が妻に財産を相続させる遺言をする場合に、万が一、妻が遺言者よりも先に死亡した場合に、妻に相続させようとした財産を誰に相続させるのかを決めておくことも、予備的な遺言になります。
  2.    手数料算定における予備的な遺言の評価
       公正証書遺言において、主位的な遺言と予備的な遺言を1通の遺言公正証書に併せて記載する場合には、主位的な遺言により手数料を算定し、予備的な遺言については手数料の算定をしないので、予備的な遺言を記載したとしても、手数料の目的の価額が増えることはありません。
       これに対し、まず、主位的な遺言のみの遺言公正証書を作成し、後日になって、予備的な遺言を追加するために、予備的な遺言の遺言公正証書を作成する場合には、予備的な遺言についても手数料の算定をすることになりますので、御留意ください。

Q3.遺言によって、妻に対し、建物に居住する配偶者居住権を取得させることができますか。

  1.    配偶者居住権
       民法の改正により、令和2年4月から、遺言書は、遺言によって、その所有する建物に相続開始の時に居住している配偶者に対し、その居住している建物の全部について、無償で使用及び収益をする権利(配偶者居住権)を取得させる遺贈をすることができるようになりました(民法1028条)。
       したがって、遺言者は、例えば、子供に対し、その所有する建物及び敷地を相続させる(遺贈する)とともに、配偶者に対し、その建物に関する配偶者居住権を遺贈する旨の遺言をすることによって、配偶者が、長期間にわたって、住み慣れた居住環境での生活を継続することができるようにすることが可能になったわけです。
  2.    手数料算定における配偶者居住権の評価
       公正証書遺言において、手数料の算定に当たっては、配偶者居住権は、居住建物及びその敷地(又は敷地利用権。以下同じ。)の合計評価額の3割に相当する額を配偶者居住権の価額として、手数料の計算を行います。他方、居住建物及びその敷地を取得する者については、居住建物及びその敷地の合計評価額の7割に相当する額をその取得価額として、手数料の計算を行うことになります。
       詳しくは、公証人にお尋ねください。

5 自筆証書遺言と公正証書遺言の相違

Q1.自筆証書遺言は、どのように作成するのですか。

  1.    自筆証書遺言の作成
       自筆証書遺言は、遺言者が、紙に、自ら遺言の内容の全文を手書きし、かつ、日付及び氏名を書いて、署名の下に押印することにより作成します。
       なお、平成31年1月からは、民法の改正により、パソコン等で作成した財産目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産登記事項証明書等を財産目録として添付することが認められるようになりました(民法968条)。この場合、これらの財産目録には、遺言者が毎葉(自書によらない記載が両面にあるときは、その両面)に署名し、押印しなければなりません。
       このように、添付する財産目録については、自署でなくてもよくなったのですが、財産目録以外の全文(例えば、財産目録記載のどの財産を誰に相続させ、又は遺贈するという記載を含みます。)は、遺言者が自書しなければなりません。これをパソコン等により記載したり、第三者に記載してもらったりした場合には、遺言が無効になります。
  2.    自筆証書遺言の保管
       自筆証書遺言は、遺言者が自ら保管するほか、法務省令で定める様式に従って作成した無封の自筆証書遺言であれば、遺言書保管制度を利用して法務局で保管してもらうこともできます(Q3参照)。

Q2.公正証書遺言と自筆証書遺言には、どのような違いがありますか。

   公正証書遺言と自筆証書遺言には、次のような違いがあります。

  1.    無効となる危険性の有無
       自筆証書遺言は、内容が簡単な場合はともかく、そうでない場合には、法律的に見て不備な内容になってしまう危険性があり、後に紛争の種を残したり、無効になってしまったりする場合もあります。しかも、自筆証書遺言は、誤りを訂正した場合には、遺言者が、その訂正した箇所を指示し、これを訂正した旨を付記して、そこにも署名し、かつ、その訂正した箇所に押印をしなければならないなど、方式が厳格なので、方式不備で無効になってしまう危険も付きまといます(民法968条)。
       これに対し、公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が関与するので、複雑な内容であっても、法律的に見てきちんと整理した内容の遺言にしますし、もとより、方式の不備で遺言が無効になるおそれもありません。また、公正証書遺言は、遺言をその場で訂正する場合でも、公証人が責任をもって訂正手続を行うので、安心です。
  2.    字が書けない場合
       自筆証書遺言は、財産目録以外は全文を自書しなければならないので、当然のことながら、病気等で手が不自由になり、字が書けなくなった方は、利用することができません。
       これに対し、公正証書遺言では、体力が弱り、あるいは病気等のために、自書が困難となった場合でも、公証人に依頼することによって、遺言をすることができます。遺言者が署名することさえできなくなった場合でも、公証人が、遺言公正証書に、その旨を記載するとともに、「病気のため」などとその理由を付記し、職印を押捺することによって、遺言者の署名に代えることができることが法律で認められています。公証実務では、これに加えて、公証人が遺言者の氏名を代署し、その代署した氏名の次に、遺言者に押印してもらうことが行われており、遺言者が押印することもできないときは、遺言者の意思に従って、公証人等が遺言者の面前で遺言者に代わって押印することができます。
  3.    検認手続の要否
       自筆証書遺言は、その遺言書を発見した者が、必ず家庭裁判所にこれを持参し、その遺言書を検認するための手続を経なければなりません(ただし、Q3の法務局における遺言書保管制度を利用した場合には、検認の手続が不要です。)。
       これに対し、公正証書遺言では、家庭裁判所における検認の手続が不要ですので、相続人等の負担が少なくて済みます。
  4.    証人の要否
       自筆証書遺言は、証人が不要です。
       これに対し、公正証書遺言では、証人2名の立会いが必要です。証人が立ち会うことによって、遺言者の真意を確認し、手続が適式に行われたことが担保されます。
  5.    保管上の危険性の有無
       自筆証書遺言は、自宅で保管していた場合には、これを紛失したり、発見した者が、自分に不利なことが書いてあると思ったときなどに、破棄したり、隠匿や改ざんをしたりしてしまう危険性がないとはいえません。
       これに対し、公正証書遺言では、遺言書の原本が必ず公証役場に保管されるので、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりする心配も全くありません。
  6.    費用の有無
       自筆証書遺言は、自分で書けばよいので、費用も掛からず、いつでも書くことができます(ただし、Q3の法務局における自筆証書遺言書保管制度を利用する場合には、若干の手数料が必要です。)。
       これに対し、公正証書遺言では、政令で定められた手数料が必要です。ただし、相談は、全て無料です。

Q3.自筆証書遺言について法務局における遺言書保管制度を利用した場合に比べ、公正証書遺言には、どのような特徴やメリットがありますか。

   自筆証書遺言を法務局において保管する遺言書保管制度が創設され、令和2年7月から運用が開始されました。その詳細は、法務省のホームページの説明を御覧ください。
   自筆証書遺言について、法務局における遺言書保管制度を利用した場合には、公正証書遺言の場合と同様に、遺言書の紛失やこれを発見した者による破棄、隠匿、改ざん等の危険を防止することができ、また、家庭裁判所における検認の手続も不要となります。
   しかし、公正証書遺言は、遺言書保管制度が始まった現在でも、次のとおり、メリットが多く、安全確実な遺言の方法であるということができます。

  1.    自書の必要性の有無
       遺言書保管制度を利用した場合でも、自筆証書遺言である以上、遺言者が財産目録以外の全文を自書しなければならないことについては、変わりがありません。しかも、遺言書保管制度を利用するためには、通常の自筆証書遺言ではなく、法務省令で定める様式に従って作成した自筆証書遺言でなければならず、また、遺言書は、封筒に入れて封印した状態ではなく、無封のものでなければなりません。
       これに対し、公正証書遺言では、公証人が遺言者から告げられた内容を遺言書に記載しますので、遺言者が自書する部分は、署名部分だけとなります。しかも、遺言者が病気等のために署名をすることができないときは、公証人が遺言者の署名に代わる措置をとることが法律上認められているので(Q2の2参照)、遺言者は、自ら署名する必要はありません。
  2.    高度な証明力の有無
       遺言書保管制度を利用した場合でも、自筆証書遺言について、法務局では、遺言の内容に関する質問や相談には応じることができません。したがって、自筆証書遺言の内容については、遺言者の自己責任ということになります。
       これに対し、公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が、遺言内容をきちんと整理して作成することはもとより、遺言者の遺言能力(有効な遺言をすることができる判断能力)の有無等の法律的に有効な遺言であるために必要な事項についても、慎重にチェックをして作成する公文書です。したがって、遺言者が遺言書のとおり陳述したことについて、高度な証明力(実質的な証明力)が認められます。
  3.    出張の有無
       遺言書保管制度は、自筆証書遺言の保管の申請時に、遺言者本人が法務局に出向かなければならず、法務局の職員が出張することはないので、遺言者が病気等のために法務局に出向くことができないときは、この制度を利用することができません。
       これに対し、公正証書遺言は、遺言者が高齢や病気等のために、公証役場に出向くことが困難な場合には、公証人が、遺言者の御自宅、老人ホーム、介護施設、病院等に出張して、遺言書を作成することができます。
  4.    遺言書の写しの入手方法
       遺言書保管制度では、法務局で保管された自筆証書遺言について、写しは手元に残りません。遺言者が死亡した後に、相続人等が、遺言者の出生から死亡までの戸籍等の謄本一式等を添付して、遺言書情報証明書(遺言書の画像情報を表示したもの)の交付を申請し、その証明書の交付を受け、これを用いて遺言執行を行います。
       これに対し、公正証書遺言では、遺言書の作成時に、正本1通と謄本1通の交付を受けるのが通常であり、これを利用して遺言執行を行うので、遺言者の死後に、改めて遺言書の謄本を請求する必要はありません。

6 秘密証書遺言と公正証書遺言の相違

Q1.秘密証書遺言は、どのように作成するのですか。

  1.    秘密証書遺言の作成手順
       秘密証書遺言は、遺言者が、遺言の内容を記載した書面に署名押印をし、これを封筒に入れて、遺言書に押印した印章と同じ印章で封印をした上、公証人及び証人2名の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申し述べ、公証人が、その封紙上に日付及び遺言者の申述を記載した後、遺言者及び証人2名とともにその封紙に署名押印をすることにより、作成します。
       なお、民法では、「証人二人以上」と定められていますが、公証実務では、証人が3名以上になることはなく、証人2名で秘密証書遺言が作成されています。
       以上の手続を経由することにより、その遺言書が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にでき、かつ、遺言の内容を誰にも明らかにせず、秘密にすることができます。
  2.    自書以外も可能
       秘密証書遺言は、自筆証書遺言と異なり、自書である必要はないので、遺言書は、パソコン等を用いて文章を作成しても、第三者が筆記したものでも、差し支えありません。

Q2.秘密証書遺言には、どのような問題点がありますか。

   秘密証書遺言には、公正証書遺言と異なり、次のようなリスク等があります。

  1.    無効となる危険性の存在
       秘密証書遺言では、公証人は、その遺言書の内容を確認することはできないので、遺言書の内容に法律的な不備があったり、紛争の種になったり、無効となったりする危険性がないとはいえません。
  2.    保管上の危険性の存在
       秘密証書遺言は、遺言者自身が保管する必要があります。そのため、これを紛失したり、発見した者が、自分に不利なことが書いてあると思ったときなどに、破棄したり、隠匿や改ざんをしたりしてしまう危険性がないとはいえません。
  3.    検認手続の必要性
       秘密証書遺言は、法務局において遺言書を保管する遺言書保管制度を利用することができません。したがって、秘密証書遺言は、遺言書保管制度を利用しなかった自筆証書遺言と同じように、この遺言書を発見した者が、家庭裁判所に届け出て、検認手続を受けなければなりません。