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公証事務

9-2
外国文認証

外国文認証

Q1. 外国文認証とは、何ですか?

   外国文認証とは、外国語で作成された私署証書、および外国語または日本語で作成され、外国において使用される私署証書に対する認証のことで、一般に略してこのように呼んでいます。
   私署証書とは、私文書(個人や会社が作成した文書等)のうち、作成者の署名、署名押印または記名押印のある文書のことです。
   公証人の認証は、その私署証書を作成名義人本人が作成したことを証明するものです。
   私署証書の認証は、日本文であろうと外国文であろうと同じ手続です。
   日本においては、私文書を官公庁や会社等に提出する際、公証人の認証を求められることはほとんどありません。日本では、印鑑登録制度が充実していて、印鑑登録した実印を私文書に押し、印鑑登録証明書を文書と共に当該官公庁等に提出すれば足りるからです。
   ところが、外国においては、そのような訳にはいかず、官公庁や会社等に提出する私文書には、公証人の認証を求められることがほとんどです。
   ですから、実務上、公証人の行う私署証書の認証は、そのほとんどが外国文認証で、外国の官公庁、金融機関、企業その他の機関に提出する文書に対するものです。

公文書を外国へ提出する際の認証

Q2. 外国の官公庁や会社から、公証人の認証のある会社の登記事項証明書や個人の戸籍事項証明書の提出を求められたときは、どうすればよいですか?

   会社の登記事項証明書や個人の戸籍事項証明書は、公的機関が作成した公文書ですから、公証人は認証することができません。公文書はそれを発行した公的機関自身が認証しているからです。日本の官公署、自治体等が発行する公文書に対する公印確認やアポスティーユ認証は、外務省で受け付けております。
   なお、公文書であっても、嘱託人が作成した「宣言書(Declaration)」を添付することで、公証人が認証することが可能です。例えば、嘱託人が登記事項証明書や戸籍事項証明書等を外国語に翻訳し、その翻訳した人が「自分は日本語と当該外国語に堪能であり、添付の公文書の記載内容を誠実に翻訳した。」旨を記載した「宣言書(D eclaration)」を作成して署名し、この文書に外国語訳文と登記事項証明書等とを添付した上、その宣言書に対して公証人の認証をしてもらえばいいのです。
   この宣言書自体は、公文書ではなく、私人が作成した私文書、すなわち私署証書なので、公証人が認証することができるのです。

謄本を外国へ提出する際の認証

Q3. 外国の官公庁や会社から、厚生労働大臣が製薬会社に対して発行した薬品製造承認書について、公証人による謄本認証を求められたときは、どうすればよいですか?

   謄本認証は、写しが原本と同じであるという公証人の認証の一種です。原本を提出することができないときに、謄本認証をした原本の写し(コピー)を相手方に提出するのです。しかし、公証人は、公文書の謄本認証はできません。ご質問の薬品製造承認書も公文書ですから、認証することができません。
   そこで、実務上は、二つの方法がとられています。
   その一つは、前問と同じやり方で、嘱託人が当該薬品製造承認書を外国語に翻訳し、その翻訳した人が「自分は日本語と当該外国語に堪能であり、添付の公文書コピーの記載内容を誠実に翻訳した。」旨を記載した「宣言書(Declaration)」を作成して署名し、その宣言書に公文書である薬品製造承認書のコピーと訳文を添付し、その宣言書に対して公証人の認証を受ける方法です。
   もう一つは、その会社の代表取締役あるいは証明者としてふさわしい役職にある者が、「添付した公文書のコピーは原本の真正なコピーであり、その内容どおりの事実が存する。」旨の「宣言書」または「証明書(Certificate)」を作成し、この宣言書または証明書に対して公証人の認証を受ける方法です。

代理認証

Q4. 外国文証書についても、代理認証ができますか?

   代理認証とは、代理人が公証人の面前で、証書の署名、署名押印または記名押印が本人のものであることを自認する方法で証書の認証を行うものです(9-1「認証の種類」参照)。
   認証対象の文書の署名者から代理権を付与する委任状をもらえば、代理人が公証役場に出向いて代理認証を受けることができます。
   しかし、その証書を提出する国の相手方の意向を十分把握しておく必要があります。日本法上は、代理認証は有効ですが、その証書の提出を求める外国の機関の中には、代理認証を認めず、署名者本人が公証人の面前で行う目撃認証(面前認証)を求めていることがあるからです。

認証文の訳文

Q5. 外国語で作成された証書に対する認証の場合に、公証人の方で、日本文の認証文に外国語の訳文を付けてもらえますか?

   認証文自体は、日本文で作成されます。ただ、サービスとして、ほとんどの公証役場において、認証文を外国語(主として英語)に訳し、その訳文に公証人がサインをして認証文に添付する扱いが行われています。

アフィダビットと宣誓供述書

Q6. アフィダビットと宣誓供述書は、同じものですか?

   アフィダビット(一般的に「宣誓供述書」と訳されています。)とは、法廷外で公証人その他宣誓をつかさどる者の面前で宣誓した上、記載内容が真実であることを確約し、署名したものをいい、英米両国をはじめ多くの国で使われています。「Affidavit」という表題があっても、必ずしも我が国の「宣誓供述書」(宣誓認証された私書証書)と法律的に同一の性質を持つ文書とは限りません。
   しかし、「Affidavit」の表題を掲げ、あるいは、「swear、take an oath」といった宣誓を表すような文言がある外国文書の認証については、単なる署名認証ではなく、宣誓認証が要求されていることが多いと思われます。
   なお、署名の真正の確認方法についても、自認認証や代理自認(代理認証)ではなく、目撃認証(面前認証)が求められることも少なくありません。ですから、嘱託人としては、その証書の提出を求める外国の機関等がどの方法による認証を求めているのかを十分理解して、これを公証人に正確に伝えることが重要です。

リーガリゼーション

Q7. 公証人の認証を得た文書が海外の送り先に問題なく受け入れられるには、どうすればよいですか?

   文書が海外の送り先で問題なく受け入れられるためには、その文書が真正に作成されたことが、相手方において容易に確認できなければなりません。その確認の手段として考え出されたのが、二重三重の公的機関による認証、証明手続です。
   まず、文書に記載された署名を公証人が認証し、次いで、その証明者の署名や公印を別の公的機関が更に証明するという制度です。前者の署名認証を「ノータリゼーション(Notarization)」といい、後者の他の機関の証明を「リーガリゼーション(Legalization)」と言っています。
   このように、公証人の認証すなわちノータリゼーションの次に、リーガリゼーションが伴うのが通常ですが、常にリーガリゼーションが必要とされるのではなく、文書を受ける相手方が民間会社等で、相手国の公的機関に提出する必要のないときなど相手方に異論がなければ、公証人の認証(ノータリゼーション)だけですまされる場合もあります。
   なお、公証人の認証後の公的機関による公的証明(リーガリゼーション)の手続は、当該私文書の署名者が自ら行う必要はなく、第三者に依頼して行ってもかまいません。

Q8. 公証人の認証(ノータリゼーション)の次に行われるリーガリゼーションの流れは、どのようなものですか?

   公証人の認証を受けた後、

  1.    その公証人の所属する法務局(地方法務局)の長からその私文書に付されている認証が当該公証人の認証したものであることの証明(公印証明)を受け
  2.    次に、外務省において、その法務局長の公印が間違いないことの証明(公印確認)を受け(郵送でも可とのこと。)
  3.    最後に、提出先の国の駐日大使館(領事館)の証明(これを「領事認証」といいます。)を受ける

   という順序になります。

アポスティーユ

Q9. Q8と異なる取扱いを定めたハーグ条約というのがあると聞きましたが、どのような内容の条約ですか?

   Q8の①〜③のような領事認証に至るまでの二重、三重の証明手続は煩雑です。そこで、その簡素化を図るため、領事認証を不要とするハーグ条約が締結され、日本もこれに加盟しています。その結果、条約加盟国の領域で提出される文書には、条約で定めた形式の外務省の「アポスティーユ(APOSTILLE)」という公印証明を受ければ(郵送でも可とのこと。)、日本にある当事国の領事認証が不要になり、前問の③の手続が省略でき、その私文書を直ちに当事国に送ることができます。

Q10. 東京都内、神奈川県内、静岡県内、愛知県内および大阪府内の公証役場に行けば,外務省に行ったり郵送したりしなくて良いと聞きましたが、どういうことでしょうか?

   東京都内、神奈川県内、静岡県内、愛知県内および大阪府内の各公証役場では、提出先の国がハーグ条約に加盟している場合には、既にアポスティーユの付いている認証文書を作成しますので、公証人の認証を得れば、法務局と外務省に出向く必要がなく、直ちに海外の当事国の相手方に提出することができます。
   また、これらの公証役場では、提出先の国がハーグ条約に加盟していない場合についても、あらかじめ法務局長の認証と外務省の認証のある認証文書を作成しますので(ただし、国交等のない国や地域を除きます。)、前に述べましたような法務局と外務省に改めて出向くという手続を経る必要がなく、公証人の認証を得た後、直ちに駐日大使館(領事館)で領事認証を受ければ足ります。
   なお、令和4年10月から、北海道(札幌法務局管内のみ)、宮城県内および福岡県内の公証役場でも同様の認証手続を受けることができます。

Q11. ハーグ条約に加盟しているのは、どのような国ですか?

   ハーグ条約加盟国は、現在(R6.1.11現在)のところ以下のとおりです。
   なお、最新のものについては、外務省のホームページの「ハーグ条約(認証不要条約)の締約国(地域)」を参照してください。

【ア】

アイスランド
アイルランド
アゼルバイジャン
アメリカ合衆国
アルゼンチン
アルバニア
アルメニア
アンティグア・バーブーダ
アンドラ
イギリス(英国)
イスラエル
イタリア
インド
インドネシア
ウクライナ
ウルグアイ
ウズベキスタン
エクアドル
エストニア
エスワティニ(旧スワジランド)
エルサルバドル
オーストラリア
オーストリア
オマーン
オランダ

 

【カ】

カーボベルデ
ガイアナ
カザフスタン
カナダ
北マケドニア
キプロス
ギリシャ
キルギス
グアテマラ
クック諸島
グレナダ
クロアチア
コスタリカ
コソボ
コロンビア

 

【サ】

サウジアラビア
サモア
サンマリノ
サントメ・プリンシペ
ジャマイカ
ジョージア
スイス
スウェーデン
スペイン
スリナム
スロバキア
スロベニア
セーシェル
セネガル
セルビア
セントクリストファー・ネービス
セントビンセント
セントルシア

 

【タ】

大韓民国
タジキスタン
チェコ
中華人民共和国
チュニジア
チリ
デンマーク
ドイツ
ドミニカ共和国
ドミニカ国
トリニダート・トバゴ
トルコ
トンガ

 

【ナ】

ナミビア
ニウエ
ニカラグア
日本
ニュージーランド
ノルウェー

 

【ハ】

パキスタン
バーレーン
バヌアツ
パナマ
バハマ
パラオ
パラグアイ
バルバドス
ハンガリー
フィジー
フィリピン
フィンランド
ブラジル
フランス
ブルガリア
ブルネイ
ブルンジ
ベネズエラ
ベラルーシ
ベリーズ
ペルー
ベルギー
ボスニア・ヘルツェゴビナ
ボツワナ
ポーランド
ボリビア
ポルトガル
香港特別行政区
ホンジュラス

 

【マ】

マーシャル諸島
マカオ特別行政区
マラウイ
マルタ
南アフリカ共和国
メキシコ
モーリシャス
モナコ
モルドバ
モロッコ
モンゴル
モンテネグロ

 

【ラ】

ラトビア
リトアニア
リヒテンシュタイン
リベリア
ルクセンブルク
ルーマニア
レソト
ロシア

 

なお、上記の締約国のほか、次の諸国の海外領土(県)でも使用できます。

●フランス:グアドループ島、仏領ギアナ、マルチニーク島、レユニオン、ニューカレドニア、ワリス・フテュナ諸島、サンピエール島、ミクロン島、仏領ポリネシア
●ポルトガル:全海外領土
●オランダ:アルバ島、キュラサオ島、シント・マールティン島
●イギリス:ジャージー島、ガーンジー島、マン島、ケイマン島、バミューダ諸島、フォークランド島、ジブラルタル、モンセラット、セントヘレナ諸島、アンギラ、タークス・カイコス諸島、英領バージン諸島

ハーグ条約非加盟国のうち特別な取扱いの国または地域

Q12. ハーグ条約に加盟していない国または地域で、特別の取扱いをしている国はありますか?

   ハーグ条約に加盟していないが、特別の扱いをする国または地域がいくつかあります。例えば、台湾については、公証人の認証を得た後、台北駐日経済文化代表処で認証を受ければ足ります。詳しくは最寄りの公証役場にお尋ねください。

指紋の同一性の証明

Q13. 外国の官庁から公的証明のある指紋の提出を求められることがありますが、公証人にその証明を頼むことができますか?

   お尋ねのような場合に、警察(警視庁または道府県警察本部)に依頼すれば、外国の官庁から提出を求められている指紋採取用紙に指紋を採取してもらうことができます。ただ、警察では指紋採取者の署名欄に署名をしてくれませんので、指紋採取の現場に公証人が立会って、その状況を公正証書にして指紋を採取した用紙を添付したものをお渡しする取扱いをしています。