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お知らせ

喜界島(鹿児島県)における広報活動

平成30年11月 九州公証人会 広報委員

九州公証人会では、平成30年度、初の試みとして、鹿児島公証人会と連携し、平成30年11月8日、九州公証人会福岡公証役場公証人が鹿児島県大島郡内の喜界島に赴き、無料の公証相談会を開催したので報告する。

1 喜界島の現況

(1)位置と概要
 喜界島は、鹿児島から南に約380キロメートル、奄美大島の東約25キロメートルに位置し、距離的には鹿児島本土よりも沖縄に近く、東経130度00分の太平洋上に浮かぶ面積約56平方キロメートルの島である。同島は、隆起珊瑚礁の島で、現在でも毎年隆起を続けているとのことである。

 喜界島は、古くは、12世紀の平安時代、京都の鹿ケ谷で平家追討を企てた鹿ケ谷の謀議に失敗した僧俊寛が流刑された地とされ、島内には俊寛が埋葬されている可能性が高いとされる場所(喜界町役場から徒歩約20分)に、墓と俊寛の座像が建立されている。近くでは、幕末に、NHKの大河ドラマ「西郷どん」でも描かれた薩摩藩士村田新八が島流しにされた島としても知られている(ちなみに、同時期に島流しにされた西郷吉之助が流れされた島は、徳之島である。)。
 喜界島の人口は、平成30年9月時点で、約7120人であり、年々減少しているようであるが、鹿児島県内の離島では、奄美大島、種子島、徳之島、沖永良部島、屋久島に次ぐ人口規模である。
 喜界島の主な産業は、農業である。

(2)交通アクセス
 喜界島と島外との往来手段は、飛行機とフェリーである。島の南西部に位置する喜界空港は、奄美空港との間で1日往復3便、鹿児島空港との間で1日往復3便運航し、フェリーは、奄美大島との間で、早朝と夜の往復2便運航している。ちなみに、福岡空港からは、喜界空港への直行便はなく、鹿児島空港あるいは奄美空港で乗り継ぐこととなるが、乗り継ぎのための待ち時間も長いことが多い。

(3)最寄り公証役場とのアクセス
 鹿児島県内の離島のうち、公証人役場が置かれているのは、奄美大島の奄美市内の名瀬公証人役場のみである。喜界空港と奄美空港間の飛行時間自体は約20分間と短いものの、奄美空港から奄美市名瀬中心部にある名瀬公証人役場まではバスを利用して片道約1時間を要し、飛行機の便数が少ないことと相まって、喜界島の住民が奄美大島の公証役場に出向くには時間的、経済的に見ても必ずしも容易ではなく、気軽に公証役場を利用できる環境にはないといえる。

2 喜界島における広報活動

(1)広報活動実施の経緯
 鹿児島県内の離島における広報活動については、名瀬公証人役場公証人が喜界島、徳之島、奄美大島、徳之島の各地において、公証相談会や講演会を実施してきたが、その分負担も大きいものがあった。このような状況なども踏まえ、離島や司法過疎地での公証サービスを充実させるべく、日公連、鹿児島県公証人会及び九州公証人会が連携し、鹿児島県内の離島での広報活動を支援推進することとなった。

(2)広報活動の準備状況
 平成30年8月28日付けで、名瀬公証人役場公証人から喜界町長宛てに、同年11月8日の町役場での派遣登記所の開催に併せて、福岡公証役場公証人による「公証人による遺言等相談会(無料)」の開催(当日午前9時から午後1時まで)について、派遣登記所と同室を相談会場として確保願うとともに、町広報誌への無料相談会開催記事の掲載と、開催前日・当日の町内広報無線による広報を依頼する旨の文書を発出して便宜供与の要請を行った。
 福岡公証役場公証人は、無料相談会前日の11月7日、福岡空港から鹿児島空港で乗り継いで空路喜界島に入った。

(3)広報活動の状況 
 福岡公証役場公証人は、11月8日当日は、午前9時からの相談会の開催に合わせて、会場となっていた喜界町役場に赴き、所要の挨拶をした後、相談会の部屋に入って待機した。
 午前9時前に、島内では実働ほぼ1名という司法書士の方が表敬の挨拶に訪れたため、同司法書士から島内の状況や遺言公正証書の利用・作成状況等について話を聞くことができ、また、若干の意見交換を行った。島内の高齢化は進んでいること、遺言の作成依頼は年に僅かしかなく、その場合は名瀬の公証人に依頼していること、任意後見制度の利用は家族関係の濃密な土地柄を反映してかほとんどないとのことであった。

 公証相談会は、午前9時から午後1時まで開催したが、4件6名の相談があり、いずれも遺言、相続に関係するものであった。

 今回の相談者は、いずれも町の広報無線(防災無線)で相談会の開催を知って相談に来たとのことであり、喜界町では、広報無線が住民の生活に溶け込んでいることを実感させられた。
 ちなみに、同時に開催していた派遣登記所は、予約制で、担当者2名が順次対応していたが、相談者は途切れることなく訪れて盛況であり、利用者が多いことに驚かされた。

 

3 課題等

 今回は、初めて空路福岡から喜界島入りしての広報活動であったため、現地での時間が読めないこともあり、無料の相談会のみを実施したが、今後は、時間の調整次第であるが、講演会の開催も検討する余地があると思われた。また、今年度広報活動を行わない他の離島についても、住民の潜在的な需要や期待はあるのではないかと思われ、当面、ひととおりは離島における無料相談会等を開催し、その結果等を検証して、住民の利便性も踏まえつつ、今後の離島や過疎地における広報活動に活かすことが必要と思われる。