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公証事務

Q2.予備的な遺言について、説明してください。

  1.    予備的な遺言の事例
       例えば、遺言者が長男と二男(いずれも結婚して子供がいる。)に財産を相続させる遺言をした場合に、万が一、長男が遺言者よりも先に死亡したときは、遺言者としては、長男に相続させようとした財産を、孫である長男の子供に相続させたいと考えることが少なくないように思います。
       しかし、そのことを遺言に記載しておかないと、当然には長男の子供に相続させることにはなりません。長男が遺言者よりも先に死亡したときは、遺言のうち、長男に相続させることにした部分が無効となるからにほかなりません。その部分は遺言をしたことになりませんので、相続人間で改めて遺産分割協議をしなければ、その帰属が決まらないことになります。
       そこで、そのようなことがないように、遺言において、①「遺言者は、その有する△△ の財産を、長男に相続させる」という条項(主位的な遺言)とともに、②「遺言者は、長男が遺言者に先立って、または遺言者と同時に死亡したときは、長男に相続させるとした財産を、長男の子供に均等の割合で相続させる」という条項(予備的な遺言)を記載しておけば、万が一、長男が遺言者よりも先に死亡したときでも、長男に相続させようとした財産を、長男の子供に相続させることができることになります。
       なお、長男が遺言者と同時に死亡したときも、法的には、長男が遺言者よりも先に死亡したときと同じ、長男に相続させることにした部分が無効になるので、上記② のような記載をします。
       このように、遺言者が、万が一に備えて、財産を相続させ、または遺贈する者をあらかじめ予備的に定めておく遺言を「予備的な遺言」といいます。例えば、遺言者が妻に財産を相続させる遺言をする場合に、万が一、妻が遺言者よりも先に死亡した場合に、妻に相続させようとした財産を誰に相続させるのかを決めておくことも、予備的な遺言になります。
  2.    手数料算定における予備的な遺言の評価
       公正証書遺言において、主位的な遺言と予備的な遺言とを1通の遺言公正証書に併せて記載する場合には、主位的な遺言により手数料を算定し、予備的な遺言については手数料の算定をいたしません。したがって、予備的な遺言を記載したとしても、遺言の目的である財産の価額に対応する手数料の額が増えることはありません。
       これに対し、まず、主位的な遺言のみの遺言公正証書を作成し、後日になって、予備的な遺言を追加するために、予備的な遺言の遺言公正証書を作成する場合には、予備的な遺言について手数料の算定をすることになりますので、ご留意ください。