
令和8年度の日本公証人連合会会長に就任いたしました加藤でございます。
よろしくお願いいたします。
公証人は、公証役場の利用者にお支払いいただく手数料のみで業務を行っており、国から給与等を受けることもありませんが、法務大臣から任命されて国の事務である公証事務を担う実質的な公務員の立場にあり、また、長年にわたり法律事務に携わってきた法律の専門家として、公証事務を通じて国民の権利保護と私的紛争の予防の実現に努めています。
公証人の行う公証事務には、①契約や遺言などの法律行為が行われる場面において本人の意思に基づいてその法律行為が有効に行われたことを自ら確認し、あるいは私法上重要な事実を自ら確認した上、その確認した事実を記録して証明する公正証書の作成、②人が契約書等の法的な文書に署名や押印をする場面を確認し、あるいは既にされた署名や押印等について本人が自ら行ったことを認める陳述をするのを確認し、その文書を作成したのがその人であることを証明するなどの私署証書等の認証、③申請のあった日に特定の私署証書が存在している事実を確認して証明する確定日付の付与などがあります。
このように、公証事務は、公証人が法律行為や法的に重要な事実を自ら確認して証明するものであり、そのことによって、将来、その法律行為の効力や法律上重要な事実の存否をめぐる紛争の発生を予防するものであるため、公証人には、高度な法的知識と豊富な法律実務経験が必要ですし、また、一方当事者に偏ることのない中立・公正な執務の遂行が求められています。
高齢化が進む我が国においては、将来、認知能力・判断能力が衰えた場合の生活等に不安を抱える方や、亡くなられた後の財産の承継や様々な事務の処理をどうするか悩んでおられる方も少なくないと思われますが、そのような場合に、ご自身が信頼する方に認知能力・判断能力が衰えた場合の自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を委任する任意後見契約や、ご自身が信頼する方に死後のさまざまな事務の処理を委任する死後事務委任契約、死後の財産の承継などを自らの意思で定める遺言などを利用することが考えられます。
これらの契約や遺言については、御本人の認知能力・判断能力が衰えたり、御本人が亡くなったりした後に効力が発生するものであるため、これが御本人の意思で行われたことを担保するためには公正証書を利用するのが適当と思われますし、任意後見契約の締結は、法律上、公正証書で行うことが必要とされています。遺言についても、一定の方式で行わなければならないこととされており、公正証書による遺言がその方式の一つとして定められています。
このようなことで、公正証書の利用の必要性は高まっているものと考えます。
また、両親が離婚した後の未成熟の子の養育費の確保についても社会的な課題となっています。このような事態を防ぐための手段として、離婚等に際して公正証書で養育費の定めをすることが考えられます。
公正証書で養育費の支払の約束をしておくことで、不払いの場合には強制執行が可能となる結果、将来の養育費の支払が担保されることになると考えられます。
このように、近時、公正証書の利用が適切と考えられる場合が増えており、私共公証人としても、そのようなニーズに積極的に応えていかなければならないと考えております。
ところで、公正証書については、昨年10月にデジタル化を目的とした法改正が行われ、公正証書は、原則としてデジタルデータで作成されることになりました。これに伴い、一定の場合には、公証役場に行かなくてもウェブ会議方式を利用して公正証書を作成することが可能となっています。
これを機に、公正証書がより利用しやすいものとなるよう、工夫を重ねていく必要があるものと思います。
私ども、公証人は、公証業務の利用が必要とされる場面が増えていることを自覚し、国民の皆さまが利用しやすい公証役場をめざして、親切・丁寧な業務遂行に努めていきたいと考えておりますので、ご理解、ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
日本公証人連合会会長
加 藤 朋 寛

