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公証事務

Q59. 変態設立事項とは、どのようなものですか。

  1. 次の(a)ないし(d)の事項は、定款に記載(又は記録。以下同じ。)しない限り、それぞれその事項の効力が認められない、いわゆる相対的記載事項であり、変態設立事項と呼ばれています(会28条)。
    (a)金銭以外の財産を出資する者の氏名(又は名称。以下同じ。)、当該財産及びその価額、並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(会28条1号。「現物出資」と呼ばれています。)
    (b)株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産及びその価額並びにその譲渡人の氏名(同条2号。「財産引受」と呼ばれています。)
    (c)株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益及びその発起人の氏名(同条3号)
    (d)株式会社の負担する設立に関する費用(同条4号、定款の認証手数料その他会社法施行規則5条で定めるもの(払込取扱機関に対する報酬等、検査役の報酬、設立登記の登録免許税等です。)を除く。)
    (a)の現物出資において対象となる財産としては、不動産、自動車・機械その他の動産、有価証券、債権、特許権その他の無体財産権、事業の全部又は一部などが考えられます。出資する者は、発起人に限ります。
    (b)の財産引受とは、発起人が会社のために会社の成立を停止条件として特定の財産を有償で譲り受けることを約する契約をいい、会社成立後、直ちに会社が事業を開始できるよう、設立中に、不動産や設備等を会社のために準備するような場合です。
    (c)の特別利益は、発起人の会社設立者としての功労に対する特別な利益であり、利益(剰余金)の配当、新株の引受け、会社施設の利用、会社製品の買受け等に関する優先権の付与などが主要な例とされます。
    (d)の設立費用には、設立事務所の賃借料、設立事務員に対する給与、印刷費、広告費、創立総会の費用、下記(3)(c)の弁護士等による証明費用などがあり、定款に記載した金額(総額)の範囲内で、発起人が成立後の会社に対して請求できます。
  2. 変態設立事項は、例えば、現物出資や財産引受の各対象財産が過大評価された場合など、発起人らによって濫用されると、一部の者を不当に利し、また、会社の基盤的財産を損ない、他の株主や会社債権者を害するおそれがあります。そこで、会社法は、これを防止するため、これらの事項については、定款に法定の記載事項を記載させた上、特別の手続を定めています。
    すなわち、①定款に変態設立事項を記載し、②この定款について公証人の認証を受け、③記載内容の当否につき、発起人の申立てに基づく裁判所選任にかかる検査役の調査を受け、④裁判所が、不当と認めたときは、これを変更する決定をし、⑤発起人は当該決定の確定後1週間以内に限り、当該決定により変更された事項についての定款の定めを廃止する定款の変更ができます(会33条1項ないし9項)。
    募集設立の場合は、募集株式と引換えにする金銭の払込期日又は期間の初日のうち最も早い日以後は、発起人による定款変更はできず(会95条)、検査役の報告等が創立総会に提出され、創立総会が不当としたときは、その決議で定款の変更ができることとされています(会96条)。
  3. 次の場合は、上記検査役の調査等が免除されています(会33条10項)。
    (a)現物出資及び財産引受の各対象財産につき定款に記載された価額の総額が500万円を超えていない場合
    上記1の(a)及び(b)に掲げる事項(会33条10項1号)
    (b)現物出資及び財産引受の各対象財産のうち、市場価格のある有価証券について定款に記載された価額が、その市場価格として会社法施行規則6条により算定される額を超えていない場合
    当該有価証券についての上記1の(a)又は(b)に掲げる事項(同項2号)
    (c)現物出資及び財産引受の各対象財産について定款に記載された価額につき、弁護士、弁護士法人、公認会計士(外国公認会計士を含む。)、監査法人、税理士、税理士法人(不動産については、当該証明に加えて更に不動産鑑定士の鑑定評価)等からその価額が相当である旨の証明を受けている場合
    上記1の(a)又は(b)に掲げる事項中、当該証明を受けた財産に係るもの(同項3号)
  4. 会社成立前から存在する継続的事業用財産を会社成立後2年以内に会社が取得する行為は、「事後設立」と呼ばれ、現物出資や財産引受に類する面があるため、その価額が会社の純資産額の5分の1を超える場合には、株主総会の特別決議事項とされています。なお、この割合は定款で下げることができます(会467条1項5号、309条2項11号)。